メディアを使って社会課題から新サービスを生む! 中部電力様プロジェクト「COE LOG」社内共有イベントをレポート
大企業も取り組みを始めた「CSV」や「コレクティブ・インパクト」。中部電力様はさまざまなステークホルダーとともに社会課題から新サービスを作り出そうとしています。その活動の柱となるのが、インフォバーンがお手伝いしている「COE LOG」プロジェクトです。
今回は一区切りを迎えたプロジェクトの振り返りをインフォバーン社員に公開して実施。さらにプロジェクトの中で重要な役割を果たしたワークショップの設計方法について、ワークショップデザイナーの臼井隆志さんによるミニ講演もありました。その模様をお届けします!
インフラ企業が取り組むべき社会課題の見つけ方
社会課題を本業で解決する「CSV」や、行政・企業・NPOなど立場の異なる組織が互いの強みを出し合って社会課題を解決する「コレクティブ・インパクト」。今、こうしたワードが企業の注目を集めています。市場が成熟する中で社会課題の解決こそが潜在市場の掘り起こしになると考えられているからです。
中部電力様も2018年3月に発表した経営ビジョンの中で、社会課題の解決を出発点に新しい成長分野を確立すること、コミュニティが抱えるさまざまな社会課題の解決に寄与すること、などを掲げています。
しかし、中部電力様はインフラ企業として地域の発展に貢献してきたにも関わらず、ユーザーや地域住民との直接的な結びつきが弱いという課題を抱えてきました。そこで、2018年にオウンドメディア「COE LOG」を立ち上げ、取材やイベントという形で、識者や行政、課題を抱える地域住民との対話を深めていきました。また、そのレポートを「COE LOG」内で公開することで、さらなる価値創造を図っています。
最初のテーマは「子育て」。さまざまな人と話し合うことで、「子育て」の中でも自分たちが解決していくべき課題を見つけていきました。取材開始から半年後には、ハッカソンで課題解決につながるサービスを考えるまでに発展。インフォバーンはメディア制作だけでなく、プロセスの設計や運営もお手伝いしています。
取材で出会った人たちとコミュニティをつくる
社内共有イベントでは、プロジェクトの一つひとつの取り組みについて、メンバーがその内容と気づきを発表しました。
プロジェクトの前半ではさまざまな取材を実施。名古屋市で子育ての悩みを共有するワークショップを行ったほか、コミュニティデザイナーの山崎亮さんと子どもの保育や教育に詳しい池本美香さんとの対談、日本一若いまち・愛知県長久手市の市長インタビューや市民座談会、プレーパークなどの事例取材を行いました。
担当したプロジェクトメンバーからは「市民の方を巻き込んだプログラムに初めて挑戦したのですが、意識が高くて意見も活発に出て、手ごたえがありました」、「取材先の方と事前打ち合わせをしっかり行うことで、その後の信頼関係の土台づくりができました」などの気づきが共有されました。
プロジェクト統括の遠藤からは「取材のやり方はこれまでとさほど差はありません。ただ、ゴールを新サービスの開発に置いているので、クライアントも取材の場での会話をとても大切にしていますし、取材を通じて学んだりつながったりするというプロセスに価値を感じていただいています」とコメントがありました。
約3ヶ月にわたる取材フェーズが終わったところで、中部電力様も含めたプロジェクトメンバー全員で振り返りセッションを行いました。そしてプロジェクトの後半は、子育てサービスの開発に向けて、取材でつながった長久手市でユーザーリサーチとハッカソンを実施。同じく長久手市で親子向けイベントも開催しました。
「ユーザーリサーチは市民や行政と一緒に行ったのですが、参加者のバックグラウンドが多彩だったため、目線合わせや情報共有の仕方を工夫しました」、「ハッカソンでは参加者へのアドバイスを中部電力様のエキスパートに行ってもらったため、自社のビジネス課題に沿ったアドバイスとなってとても有効でした」など、プロジェクトメンバーそれぞれの工夫も発表されました。
ワークショップデザイナー直伝! 学びにおける関係性の設計
社内共有イベントの後半は、長久手市で行った親子向けイベントでのワークショップを設計した臼井隆志さんのミニ講演からスタート。
臼井さんは子どもや親子を対象にしたワークショップのデザインを得意としています。赤ちゃんの触覚を育むワークショップ「ISETAN親子教室 ここちの森」などユニークな取り組みが注目されています。
臼井さんによると、ワークショップとは文脈、時間、空間、関係性、問いをデザインすること。臼井さんが最も好きだという「参加者とファシリテーターの関係性」のデザインについて詳しく教えていただきました。
ファシリテーターは、参加者にとって教師になったり弟子になったり、さまざまな役割を演じます。どういう役割を担えば、参加者が心地よく学べるかを考えて設計するのです。
例えばワークショップの最初はファシリテーターが教師となるケースが多いそうです。ファシリテーターが学びの目的を参加者に説明し、参加者と学びの目的との結びつきを強めてあげると、参加者は安心して学びに集中できます。
ワークが進んでいくと、理解の早い参加者と理解のゆっくりな参加者に分かれていきます。そのような時、ファシリテーターは船の船長のように振る舞うそうです。「理解の早い参加者には学びの目的に近い高度なタスクをしてもらい、理解のゆっくりな参加者にはまずは簡単なタスクからしてもらいます。さらに理解の早い参加者にはゆっくりな参加者のサポートもお願いしてしまうとよいですよ」と臼井さん。
このほかにも、COE LOGで取り上げた「プレーパーク」で子どもの遊びを見守るプレーリーダーの役割も「参加者とファシリテーターの関係性」をもとに設計されていると説明がありました。
子どもとの触れ合いが大人のクリエイティビティを高める
社内共有イベントの最後は、臼井さんに加え、プロジェクト統括の遠藤、コンテンツプランナーの宮本で座談会を開催。
冒頭で臼井さんから「プロジェクト全体がクライアントさんと一緒に学習する設計になっている点がユニークだと思いました! やはり学習して常識を外さないと新しいことは発想できないですから」とコメント。これに対して宮本は「中部電力様には取材ごとに毎回、気づきを言語化してもらっていました。そうした細かな積み重ねの結果、ファシリテーターや司会を積極的に引き受けてくださるなど、とにかく前のめり感が増していきました」とクライアントの変化について話しました。
また、このプロジェクトでは「子育て」をテーマにしているだけあって、多くのセッションに子どもたちが同席してくれました。こうした経験から遠藤は「子どもの思考回路を自分たちの活動に取り入れたら面白いのではないか」と考えついたといいます。臼井さんも「子どもと接する時はロジックや言語ではなく身体的なコミュニケーションが必要になりますし、わけのわからないものへの耐性も付きます(笑)。そういう意味で子どもと接することは大人のクリエイティビティを高めることにつながりますよ」と同意していました。
現場に行けば社会課題が自分事化する
社内共有イベントでの大きな気づきは、プロジェクトメンバー自身のマインドチェンジでした。これまで少し他人事だと感じていた子育てや社会課題。でも実際の現場に入って、子育てをするお母さんやその子どもたち、さらにはその背景を紐解いてくれる識者などと触れ合うと、自然と自分事化していくものです。中部電力様と同じく、私たちの中にも「もっと自分たちにできることがある」、「みんなで解決していこう」、そんな気持ちが生まれていました。
企業の間では社会課題をビジネスで解決するというトレンドが強まっています。そうした中で現場で当事者の方と触れ合う重要性をあらためて感じた会となりました。
インフォバーンではこれからも、メディアづくりのプロセスを生かしながら、新たなサービスやコミュニティをつくるお手伝いをしていきます。一緒に社会をよくしたいとお考えの皆さん、どうぞよろしくお願いします。
INFOBAHN STAFF
・プロデューサー:遠藤英之
・プロジェクトマネージャー/Webディレクター:大塚小容子
・コンテンツプランナー:宮本早織、鵜林佳奈子
・コンテンツディレクター:平岡さつき、山下佳澄
・ハッカソンプログラム、ファシリテーター:木継則幸
・サービスデザイナー:川田智子