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「妻への愛」の創業精神に立ち返る。新たなビジョン実現への行動スローガン「We Care More.」がポーラの原動力になったわけ【AWA2023レポート】

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2023年6月6日〜6月8日にかけて開催された「Advertising Week Asia 2023」。2日目のキーノートセッション「We Care More: Moving Toward a Vision of POLA Evolving From Its Origins」の内容をお届けいたします。

株式会社ポーラ代表取締役社長の及川美紀さんが登壇され、当社社長の田中準也が聞き手となり、お話をうかがいました。2029年に創業100周年を迎えるにあたり、「We Care More.」という新たなスローガンを掲げたポーラは、その創業精神を受け継いだ新たなビジョンづくりによって、製品ブランド、社員、パートナーが新たな価値を生み出していっています。

あらゆる会社がビジョンやパーパスを掲げ、世間的に広くその意義が認識されながらも、社内浸透すら難しい実情があるなかで、なぜポーラは実りある活動へと具体的につなげることができているのか。その歩みをお届けします。

※読みやすさを考慮し、発言から内容を編集しております。
※出典明記のない掲載画像は、すべて運営事務局よりご提供いただいたセッション当日の写真です。

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2万5000人のパートナーを抱える昭和4年創業のポーラ

田中準也(以下、田中):ポーラさんは、2029年に創業100周年を迎えます。そこで、ポーラさんのビジョンづくりのお話から、そのビジョンを製品ブランドにどう落とし込んでいったのか、あるいは一人ひとりの社員、ステークホルダーの方々の「個」をどうやって生かしていったのかについて、今日はお話いただければと思います。

私はインフォバーン代表取締役社長で、AWAのアドバイザリー・カウンシルをやっております田中準也と申します。どうぞよろしくお願いいたします。では、及川さん。まず自己紹介と会社のご紹介をお願いいたします。

及川美紀(以下、及川):みなさん、おはようございます。株式会社ポーラで2020年から代表取締役をしております及川美紀と申します。就任当時は、化粧品会社の老舗で女性社長は珍しいと、いくつかメディアに取り上げていただきましたが、そこで「『女性社長』ということで珍しがられる日本ってどうなのか?」とも思いまして、まだまだ遅れているダイバーシティについて、私にも何かできないかと自問自答するようになりました。

それから、ホールディング・カンパニーであるポーラ・オルビス・ホールディングスの上席執行役員として、グループダイバーシティ担当を務めたり、一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティという団体の理事をしております。

田中:及川さんは本当にお忙しいですよね。このあとも、すぐに大阪にうかがわれるそうで、あまりオフィスにいないイメージがあります。

及川:いや、いますよ(笑)。土日を使って日本中を回るようにしています。やっぱり一次情報を取らないでいると、いろんな判断ができなくなってくるんですよね。お店の雰囲気、売っている人たちの気持ちやアクション、それに対するお客様からの反応。当社は地方に拠点がかなり多いものですから、きちんと各地の一次情報を取っていかないとリアルがわからなくなるので、事あるごとに飛び回っています。

続いて、ポーラの紹介をしますと、1929年(昭和4年)に創業いたしまして、現在の従業員は1389名で、海外の子会社まで入れると約2000名という会社です。それほど大きい会社じゃないんですけど、この社員の他に、ポーラビューティー・ディレクター――昔はポーラ・レディーという名前で呼んでいました――が、2万5000名ほど個人事業主という形でポーラと専属契約・委託販売契約をしていて、頑張ってくださっています。

ポーラは、エイジングケアとスキンケアに強い化粧品会社でございまして、事業としてはエステサロン併設型の店舗が国内では一番多いですが、百貨店、ECなど、さまざまなチャネルで展開しております。

「妻への愛」による創業、受け継いだ精神「We Care More.」

田中:2029年に向けて新たなビジョンを作成された、その背景について聞いてみたいと思います。まず課題については、どういったものがあったのでしょうか。

及川:コロナ禍が始まった2020年にちょうど私は社長になったのですが、そのタイミングで世の中がガラッと変わってしまったんですね。もともとポーラは2016年からリブランディングをしていまして、さまざまなブランドの定義を変えたりしていたんですが、コロナ禍で突然、私たちが大切にしているエステ、お手入れ、人との接触、対面でのカウンセリングといったコミュニケーションが、一切禁止されてしまったんです。

化粧品会社としては、それまで大切にしてきたことの何もかもがダメだと言われたような状態でしたので、ここで一度、変化する世の中で私たちのありようを再定義しなきゃいけないと考え直して、新たなビジョンづくりが始まりました。

そこでもう一回、原点に帰って見つめたのが、1929年の当社創業時に初めての商品をつくった乳鉢なんです。

▲ポーラ最初のクリームをつくった乳鉢/ポーラ公式サイトより
https://www.pola.co.jp/about/company/philosophy/message/index.html

この乳鉢でハンドクリームをつくったことから、当社は始まったんですね。創業者の鈴木忍は、手が荒れた妻のために最高のハンドクリームをつくろうと、この乳鉢で来る日も来る日も「もっと良いものをつくれるはず」と試行錯誤を重ねたんです。苦しい生活の中で、妻があかぎれを起こしたり、皮膚がむくれたりしているのを見て、そんな妻を助けるためにつくった。最愛の人のために最高のもの、自分が一番自信が持てるものをつくって、ちゃんと手渡しで届けようとしたわけです。

当社の社員やビジネスパートナーの方は、この創業エピソードが大好きなんですよ。ポーラは妻への愛から始まったという、そのエピソードが。

身近な方への最上の愛。しかもそれを手渡しで、日頃の感謝を込めて送る。その想いが高じて、お客様が大切に使っていただくように量り売りで必要な数、必要な量だけ売るようになりました。そこから訪問販売が始まり、 「あなたの肌にはこういう扱い方がいいですよ」「あなたの肌を見るとこんな商品がおすすめですよ」と提案するスタイルが生まれていきました。どれも、その創業エピソードから生まれた発想なんですね。

この原点に立ち返って、「人から人へ」というものをどういうふうに伝えていくかをあらためて考え、「2029年ビジョン」をつくりました。

まず企業理念は、「私たちは美と健康を願う人、及び社会の永続的幸福を実現します」としました。私たちが定義する幸せな社会とは、「私と社会の可能性を信じられる、つながりであふれる社会へ」です。

それまでは「Special One. 伝統と革新による驚きと感動で互いを高め合う関係へ」と掲げていて、主語がポーラでしたが、これからの世の中を考えたときに、ポーラから社会に対するメッセージを主語にしたいと思ったんです。それで、「私と社会の可能性を信じられる、つながりであふれる社会をつくるために、我々は努力しますよ」という宣言にしようと方向性を変えたんです。

これを考えたときに、同時に伝わりやすい、わかりやすいスローガンもつくろうということで、「We Care More.世界を変える、心づかいを。」という言葉も考えました。創業精神の「人から人に届ける」ことを大事に、人をケアする、世界をケアする、地球をケアする、と大きな枠組みで企業活動を考え直そうじゃないかと。

もともとポーラ独自の価値は、妻への愛から始まったので、「Science.」と「Art.」という化粧品として大事にすべきものに加えて、「Love.」を入れ込みました。そこと関連して、組織の一員であるポーラ社員がどうあるべきかについては、自分の良いところ、長所やWillを尖らせて、周りの人たちとつながっていこうよ、と。

▲「POLA 2029年ビジョン」特設サイトより 〈https://www.pola.co.jp/special/o/wecaremore/

田中:ビジネスモデルそのものが、単にメーカーとして商品を提供するだけじゃなく、訪問販売から始まって、お店も開いて、パートナーの方々と連携してと発展してきた会社なので、本当にさまざまな人にビジョンを届けなきゃいけないですよね。

及川:社員全員に理解してもらうことも大変なことですが、特にビジネスパートナーの方は個人事業主ですから、会社とは商品を貸し借りする関係性しかないんですね。だからこそ、このビジョンをちゃんとつくらないと、企業活動を何のためにやっているのか、ビジネスパートナーのみなさんがどうあるべきか、わからなくなってしまうんですよ。

もちろん稼ぐことは大事なんですけど、儲けることに一生懸命になりすぎてもダメで、お客様と向き合う際に、この思想が伝わる接客を目指しています。きちんとこのビジョンをきっちり届けることが、ものすごく当社にとっては大事なんですね。

人をケアするって何? 社会をケアするってどういうこと? それを地球をケアすることにまで深めるには? という問いを社員やビジネスパートナーに投げかけるのが、このスローガンの持つ意味です。

16歳から100歳までいるパートナーたちが、「自分事のSDGs」活動を促進

田中:「We Care More.」のスペシャルサイトがありますね。これはおそらくお客様に向けるだけじゃなく、社員の方も見ることを意識していますよね。

及川:当社のビジネスパートナーは、中学卒業から契約できるので、下は16歳からいます。上はこの間、福島のテレビ局に放送していただいたんですけど、100歳の方がいます。これ、本当なんですよ。100歳でも毎日お店に通って、お客様に商品をお届けして、新製品の勉強も欠かさないという方がいらっしゃるんです。本当にしっかりされています。

田中:100歳⁉ その方も集合研修などにも参加されているんですか?

及川:出られています。福島の方なんですけど、毎日45分かけてお店に通われていますね。「人間、歳じゃないな」と心の底から感じさせてくれます。そのようにいろんなバックグラウンドのあるビジネスパートナーや社員たちに、ちゃんと「We Care More.」を理解していただかないといけないので、イメージでちゃんと理解できるように、このサイトをつくりました。

田中:手と手を握るアニメーションがあったりして、とても温かみのあるサイトですよね。先ほどの愛の話を聞いてからこれを見ると、さらに感慨深いものがあります。そのうえで、次はこれをどう現場の方が自分事化していくかが問われますよね。

及川:「We Care More.」のスローガンのもと、「目の前の一歩から始めよう」「自分の周りの人を助けることから始めよう」ということを伝えた際に、一番最初に動いてくれたのは、実はビジネスパートナーのみなさんだったんです。「自分事のSDGs」という言い方で、いろんなアクションを始めてくれました。

たとえば、地域の人と協力しながら困っている人を助けるプログラムを企画したり、癌の方へのサポートをゲーム形式で実施してみたり、病院で患者さんに対してハンド・トリートメントをしてみたり、いろんなことに取り組んでくれています。

当時、日本中で当社が実践している「We Care More.」の実例を集めて、日経新聞に広告も掲載しました。国際女性デーには、「目の前の女の子をどうやって助けられるか」という視点で、社員の「We Care More.」の取り組みを伝える「ひとりの女の子を変えた、ひとりの女性の話」という広告も出しました。そこから今では、「BLOOM OUR TOWN」というスローガンも生まれて、「自分たちの町に花を咲かせよう」「自分たちの町でできることを地域の人やっていこう」という活動にもつながっています。

地元のためを想った活動が、新規事業につながる

田中:そうした活動が、今では事業にまで広がっているそうですね。

及川:最初は本業派生型のSDGsという形でやっていたんですが、それが新規事業にまで発展いたしました。たとえば、「飛騨高山フューチャープロジェクト」という、お子さんたちのお仕事体験プログラムを実施しています。これは小中学生にお仕事を体験してもらうだけでなく、その感想をデジタルで発信してもらうプログラムです。これが今や、高山市の8人に1人が体験するプログラムにまでなっているんです。

そこで何が起こったかというと、子どもたちが高山のお仕事の良さをPRすることで、「自分の仕事なんて大したことない」と思っていた大人たちが、「子どもがこんなに感動してくれて、こんなに良いところを見つけてくれるんだ!」と感激して、自分たちのセルフリスペクトが上がったんですよ。

そもそも高山には大学がなくて、地元の子が高校を卒業して都会に行ってしまうとなかなか戻ってこない実情があります。本当は高山にもいっぱい素敵な仕事があって、豊かな自然もある素晴らしい地域なのに、「働く場所がない」と出て行ってしまっている。だったら、子どものときから、高山にも働く場所があることを知ってもらいたいということで、地元のポーラ・ショップのオーナーが始めた活動だったんです。それが人気になって、今ではもう3年目、立派な新規事業になっています。

田中:そうしたショップ・オーナーの方やパートナーの方が、すごく自己肯定感を持って動かれることで、そこに参加される高山の方も肯定される。すごくいい活動ですよね。

及川:そうなんです。うれしいのは、実際に先ほどの飛騨高山のオーナーから、「年始の商品の減りがものすごく激しくなりました」という報告をもらったことです。やっぱり人と人とのつながりって、そういうことですよね。自分自身の可能性が広がることで、社会的な可能性も広がっていくんです。

年齢の可能性を広げる「AGEBILITY」というコンセプト

田中:素晴らしい活動ですね。そんななか、会社としては、今度はそうしたビジョンやスローガンを製品ブランド、個々のアイテムにどう取り入れていくか、インストールしていくのか、というミッションも出てきますよね。それを体現しているのが、この「AGEBILITY(エイジビリティ)」というキャンペーンだと思いますが、ご紹介いただけますか。

及川:「私と社会の可能性を信じられる、つながりであふれた社会へ」というビジョンの「可能性」というものに対して、この「AGEBILITY」というキーワードが出てきました。当社のメインブランドである「B.A」で、「AGE(年齢)」の持つ「[A]BILITY(能力))」という可能性に挑戦しようじゃないか、と。

▲B.A「AGEBILITY」特設サイトより〈https://pola-ba-creativityinyou.jp/

旗艦店であるポーラ銀座で「Draw Your AGEBILITY」というイベントも開催しまして、赤いダリアの花びらに、自分の可能性を開く言葉、自分がやりたいこと、誰かに感謝したいことなど、ご参加いただいたお客様に書いていただきました。ダリアの花びらを1枚ずつ貼っていって、大きなお花になるという参加型インスタレーションのイベントです。

東信(あずま・まこと)さんという長年B.Aのブランド・ビジュアルをお願いしているフラワーアーティストの方に、フラワー・アレンジをお願いしながら、ダイアの花に「年齢を重ねた経験を可能性に変える」という想いや祈りを込めました

「歳を取るとやれることが少なくなる」と誤解をしている方に、「いやいや、年齢は経験を重ねることとともにあるので、体力的な衰えはあるかもしれないけど、人脈や知見が広がってできることがいっぱい増えるので、可能性に満ちているんだよ」と伝えたかったんです。

田中:昨年の9月と、コロナ禍での開催だったので、たくさんの人に来ていただきたくても入場制限をせざるをえなかったところもあったとうかがいましたが、それでも参加者一人ひとりがすごく自分に向き合っているのが伝わってきて、素敵なイベントですね。
コピーも非常に美しいし、美しいだけじゃなく、ポーラさんの想いが込もった「可能性」を象徴していると感じます。

及川:ちょうど2020年というコロナ禍のまっただなかに、B.Aは第六世代にリニューアルしたんですよ。基幹ブランドのリニューアルをしても、店頭にお客様はなかなか来られない。そんなときにリニューアルしていいのか、発売を延期すべきではないかという議論は当時、社内でも起きました。

でも、そんなときだからこそ可能性にチャレンジしてみようじゃないか、コロナ禍で先行きが見えないときにこそ未来の希望を示そう、とリニューアルを決断したんです。

B.Aは肌の遺伝子研究から生まれた商品で、遺伝子の中には、役に立たないジャンクだと思われている部分があったんですけど、そこに実は美しくなる鍵が眠っていることを当社の研究が突き止めたんです。だから、眠っている美しさの可能性を開こう、肌にも人にもある可能性を広げよう、とコンセプトをつくりました。

実はB.Aのコンセプトが今の形に決まる直前まで、「人の可能性を広げる」という企業目線の言葉だったんですが、これだと何か違うと議論をしていました。それから今の「人の可能性は広がる」という言葉に変えたときに、「あっ、これは祈りを込めたメッセージなんだ」ってしっくりきたんです。たった一言なんですけど、これは大きな意味を持ちました。「人の可能性は広がる」というコンセプトになったことで、「AGE+BILITY」というキャンペーンコンセプトも出てきたんです。

田中:「アンチエイジング」も重要な言葉ですが、「AGEBILITY」はそれともちょっと違う、一つ抜きん出た新しい考え方という感じがします。

及川:先ほど、当社には100歳のビジネスパートナーの方もいると話しましたが、実はいろんな企業を60歳を過ぎて定年退職してから、ポーラで仕事を始める方も多いんです。その方たちは年齢を財産、資産にしていて、今まで培った経験をもとに、新しい何かに飛び込んでくる方たちなんですよ。

だから、キーワードとしてはなくても、「こういう生き方って、AGEBILITYだよね」という感覚はもともと我々の中にあったので、そういうことをもっともっと世の中に訴えていこうという想いは自然と出たものでした。スキンケア商品であるB.Aがやれることは、もちろん直接的には肌をキレイにすることなんですが、同時に「これを使っているあなたは、可能性に挑戦する人ですよ」というメッセージにもなると思ったんですね。

一人ひとりの「Will」を見つめて、社員の可能性も広げる

田中:それで昨年、賞も受賞されたんですよね。

及川:はい。ジャパン・ラグジュアリーを縮めた「JAXURY AWARD(ジャグジュアリー・アワード)」」という賞なんですけど、この2022年のアワードで「唯一無二賞」というのをいただきました。「We Care More.」の思想や、B.Aなどの商品に表れた考え方、それが企業活動に展開されていることを評価していただいて、入社以来、私が一番喜んだ賞になりました。

特に「唯一無二」という言葉で評価してくださったことにものすごく感激して、社員一同、大喜びしました。コロナ禍で業績的には厳しい時期も過ごしたなかで、「どこかに応募して」というわけではないのに見つけてくださったということにも、本当に励まされました。

田中:賞を取ることを目的に事業をしているわけじゃないかもしれませんが、やっぱり関わる方々の自信になりますよね。実際に、ポーラ社自体にも変化が起きていますか。

及川:「人の可能性は広がる」と掲げるからには、「社員」の可能性も広げなきゃいけないと、さまざまな人材育成プログラム、ダイバーシティ&インクルージョンのプログラムをやってきて、社員がどんどん変わってきています。新規事業やSDGsをベースにした業務改善の提案がどんどん上がってきて、2020年には61件だったところから、今では154件に上ります。

こうしたことに関わるメンバーはかなり増えていて、「誰にでも特別に認められる機会があるか」「上司は部下の意見やアイディアに耳を傾けているか」「社会課題のために何らかの行動を起こしているか」といった項目で従業員調査をしても、プラスの結果が出ています。特に、全体を通して「従業員が会社に誇りを感じるか」という評価で、ものすごくポイントが上がっています。

田中:それは会社のパーパスと個人のパーパスがつながっていることが、可視化できている調査結果ですね。可視化されることで、社員の方が見るし、その家族の方も見るわけなので、非常にこういうのは大事ですよね。

最後のご質問として、社員個々の可能性をすごく引き出されてるなと思うんですけど、及川さん流の社員の伸ばし方、可能性の引き出し方として、何かヒントになることがあれば教えてください。

及川:そこは私もまだまだもがいている途中で、「これをやれば鉄板です」っていうのはないんですけど、でも一番大事なのはやっぱり対話じゃないかなと思っています。要するに、インプット/アウトプットする機会を、対話の中からどんどん出してあげることです。今日、大阪に行くのもまさに従業員やビジネスパートナーとの対話集会のためで、日本中を動き回っています。

なかなか最初からは自分の「Will」に気づけないんですよ。「何か得意なことを言ってください」と尋ねても、そんなことないのに「特にありません」と答える方が多い。本当にずっと悩んで黙るので、謙虚だからというより、そういうことを認識する機会が与えられてなかったんだと思います。自分がやっていることは、他人から見たら長所なんだけど、自分にとっては当たり前なので、その認識がないんですね。

それでも対話の中で、「でも、〇〇が得意じゃない」「いつも〇〇をして、お客様が喜んでいるじゃない」「こういう評価を聞いたことあるよ」と言うと、「確かに」って本人が気づくことも多いんです。私は、「自分にハッシュタグを付ける」という言い方をしているんですけど、対話集会をしているうちに、だんだんハッシュタグを自分につけれる人が増えていっています。

まずそうやって、自分には可能性があるんだ、自分にも長所がちゃんとあるんだ、と認識することが大事です。そこから、インプットする機会と、アウトプットする機会を同時に与えていくことが大事なのかなと思います。

田中:きっとみなさんにも、お持ち帰りいただけるヒントがあったと思います。今日はありがとうございました。

ENVISION編集部

変化の兆しをとらえ可視化することをテーマに、インフォバーンの過去から現在までの道のり、そして展望についてメンバーの動向を交えてお伝えしていくブログ「ENVISION」。みなさまにソーシャル・イノベーションへの足がかりとなる新たな視点をお届けしてまいります。