ホーム ブログ 【海外事例】高度情報化社会に必...

【海外事例】高度情報化社会に必要な情報発信の形とは? ー日本の未来「Society 5.0」に備えるー

記事「【海外事例】高度情報化社会に必要な情報発信の形とは? ー日本の未来「Society 5.0」に備えるー」のメインアイキャッチ画像

「Society 5.0」は日本が独自で提唱している未来社会のコンセプトです。ドイツには2011年に発表した産業政策として「Industry 4.0(第四次産業革命)」という概念がありますが、Society 5.0はそれよりももっと広義で、「人間が中心の社会」の実現が目標とされています。アメリカや欧州では、Society 5.0という言葉は使われていないものの、ビッグデータやAIを活用し、IoT(Internet of Things)や新しい技術で社会の課題を解決するという点では、同様のコンセプトの取り組みが進んでいることには変わりません。むしろSociety 5.0が目指す、持続可能であり多様で平等な社会をIT技術を使って実現するという点においては、海外の方が進んでいる事例もたくさんあります。そこで海外の好例を見て、本格的なsociety5.0社会の情報発信について考えていきましょう。

日本が提唱するSociety 5.0とは?

Society 5.0とは、日本の内閣府が2016年の『第5期科学技術基本計画』で提唱した概念で、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させ、それによって「超スマート社会」を実現するための一連の取り組みを指します。

現在の社会(Society 4.0)では、人々はインターネットを通じてサイバー空間に存在するデータベースにアクセスし、そこから情報やデータを取得しています。しかし、膨大な情報量の中から必要なものを見つけ出し、分析するのは手間がかかることがあります。また、知識や情報が十分に共有されず、分野横断的な連携が不十分であるという問題も存在します。

Society 5.0では、IoTを用いてすべての人と物が接続され、多様な知識や情報が共有されます。これにより、これまでにない新しい価値が生まれ、上記のような課題や困難が解決されることが期待されています。さらに、フィジカル空間で集積された膨大な情報(ビッグデータ)は、人工知能(AI)によって解析され、必要な情報が適切なタイミングで提供されます。AIの解析結果は、多様な形でフィジカル空間にフィードバックされ、食品ロスの削減、高齢化による医療・介護の需要増加、社会的コストの増大、地方の過疎化、持続可能な産業の促進、富の再配布、地域間の格差解消など、多くの社会課題に対する解決が期待されています。

海外の代表的な「超スマート社会構想」

日本のSociety 5.0に相当するような「超スマート社会」構想は、海外にもいくつか存在します。以下はその主なものです。

・Industry 4.0(ドイツ)
製造業におけるデジタル化とオートメーションを推進する構想です。これにより、生産効率の向上、エネルギーの効率的な使用、カスタマイズされた製品の生産などが可能になります。

・デジタルシルクロード(中国)
陸路と海路を通じて中国とヨーロッパ、アフリカ、中東、南アジアを結ぶ大規模な経済圏を作ろうとする一帯一路(Belt and Road)構想に含まれるデジタルシルクロードは、デジタルインフラストラクチャーの構築、テクノロジー輸出やデータ通信を容易にすることなどを目指したプロジェクトです。これにより参加国間のデータ通信が容易になり、経済活動が活発化することが期待されています。

・American AI Initiative(アメリカ
米国で2019年に発表された、人工知能(AI)の研究、開発、導入を促進するための戦略です。このイニシアティブは、AIの民間と公共部門での利用を促進し米国のテクノロジー優位性を維持する、すなわちAI分野でのリーダーシップを米国が維持し、経済的な成長と国家安全保障を強化することを目指したものです。

これらの構想は、それぞれが独自の目的と方向性を持っていますが、共通しているのはデジタルテクノロジーとデータを活用して社会や経済を高度化、効率化するという点です。

視覚障害者とのビジュアル共有に挑戦したタブレット|Dot Inc.

YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=HEwtP_k7jPQ

Dot Inc.は2014年に創業した韓国のスタートアップ企業で、視覚障害者のためのデバイスなどを開発しています。Dot Padは、視覚障害者が触覚で情報を得られるように設計されたタブレット端末。画面に配置されたピンの上下運動を通して「触れるグラフィック」としてアウトプットすることを可能にしました。これにはスマートフォンのスピーカーにも利用されている電磁アクチュエーターという技術を利用しているとのこと。

YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=j-2sRZMBAiM

通常の視覚を持った人は複雑なトピックを理解する時に画像や写真に頼っていますが、世界中で3億人近くいるとされる視覚障害者は、それができませんでした。また点字の本は希少で高価であり一般的ではありません。Dot Padは、あらゆるソースからのあらゆるビジュアルコンテンツを表示できる、視覚障害者向けに開発された画期的なスマート触覚グラフィック ディスプレイだったのです。

これらの実現のためには、AIの技術が不可欠でした。画像に含まれている内容を理解し、ユーザーにとって重要なものを判断してわかりやすい触覚コンテンツを作成するために、AIベースの革新的なドットイメージプロセッサーを利用。何百万もの既存の視覚および触覚グラフィックスを用いてトレーニングされ、視覚コンテンツを分析、理解、セグメント化し、それを 2,400 ドットのディスプレイ上で触覚グラフィックスに変換することに成功したのです。

このような利用者が限定されたIoT技術の場合、実際の使用法や使用シーンのイメージが湧かず、自分ごととして捉えられない場合もあるでしょう。Society 5.0におけるプロダクトは、前例がない場合やこれまでの価値観では測れない革新的なものが多く生まれてくると考えられています。そういった場合、動画で丁寧に説明することが効果的かもしれません。
Dot Inc.はさまざまな角度から制作した動画を用意して理解を促進することに努めています。

YouTubeの再生リストには、仕事や勉強など色々な場面での実際の活用法や視覚障害者がどのような感想を持つのかのイメージ動画、触覚グラフィックになる仕組みが丁寧に説明されている動画や、プロトタイプ開発中やテスト中の動画、展示会で実際に触った人の感想などを動画で収録しており、社会に広く浸透することを目指している姿勢が伺えます。

メンタルヘルスのケアを行う屋外広告|Croatia Insurance

YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=rqoAFKc4TAI

Croatia Insurance(保険会社)とBruketa&Zinic&Grey、Go2Digital(共にエージェンシー)は、通行人の不安レベルを測定するデジタルサイネージ広告「AI Anxiety Meter」を開発しました。

このキャンペーンは、過去3年間に起こった、地震、新型コロナウイルス感染症、ウクライナ戦争、などの出来事を踏まえ、長期的な精神的ストレスの危険性とメンタルヘルス対策の不十分さに警鐘を鳴らしています。

このAI Anxiety Meterの仕組みは、既存のデジタルサイネージに設置されているカメラ映像をAI を利用したメンタル認識アルゴリズムと組み合わせ、顔の表情分析をすることで通行人の不安レベルを測定しています。

広告はクロアチアの首都サグレブの14箇所に設置され、その後クロアチアの主要3都市でも同様に行われました。通行人が通り過ぎると、スクリーンが参加を呼びかけます。ユーザーは画面の前に立ち、アプリケーションが顔をスキャン。5秒間待つとパーソナライズされた結果が表示されます。メンタルの健康レベルが最も低い人々は無料の予防検査を受けるように指示され、健康レベルが高い人には健康保険の重要性についてのメッセージが送られたということです。

キャンペーンの結果、通行人の3分の1が広告を操作したとされます。これは、クロアチアの主要都市の人口の8%がメンタルレベルを測定したことを意味します。広告の平均インタラクションは 18.8 秒で、これはデジタルサイネージ広告の平均滞在時間を817%上回りました。キャンペーン終了後も、AI Anxiety Meterは引き続きアプリ上で無料で利用することができます。

このキャンペーンのおかげで無料検査を受ける人の率が上昇し、またCroatia InsuranceのWebサイトへの誘引率も高かったという結果が出ました。人々のメンタルヘルスを守ること、その社会医療の課題をAIを使って実現しつつCroatia InsuranceのPRとしても機能させています。これが斬新なのは、AIといったデジタル技術を使いながら人々にフィジカルな面での利益をもたらしている点であり、さらにそこに広告としての価値が加わったことでしょう。今後のsociety 5.0における広告や媒体の未来のあり方を示唆してくれています。

高度化する技術を、体験に変えるような情報発信を

すべての人が高度化する技術や商品の理念を説明しただけで理解してくれるとは限りません。また先進的な取り組みほど、言語コミュニケーションだけでは限界があることでしょう。今後訪れる本格的なsociety 5.0に向けて、プロジェクトや製品について知ってもらいたいときには「体験」としてアウトプットすることが必要になってくると私たちは考えています。

インターネット技術の飛躍により広告やPRの表現方法は広がっており、動画やメタバース・XR技術といった非言語コミュニケーションを交えることも選択肢に入ってきます。インフォバーンはユーザーの「体験」を実現するコミュニケーションに常にチャレンジしています。ぜひお気軽にご相談ください。

Illustration by Getty Images

EX Journal編集部

最新情報や、マーケティングトレンド、コンテンツに関する話題をお届けします。