オウンドメディアのためのインフラ選定、6つのポイント【後編】
こんにちは。インフォバーンの執行役員でProduction & Operating 部門長の磯和です。Webディレクションユニットと、Webデザイン&デベロップメントユニットを統括しています。
前回、企業がオウンドメディアを運営していくうえで必要となるインフラ導入に際して、いま主流となっている「クラウド」についてご紹介しました。
https://www.infobahn.co.jp/ib_column/2630
具体的には、以下の6つのポイントのうち、1〜3をご紹介しました。
- 長く付き合えるサーバー・インフラを選択するには
- クラウド系サーバーの分類について
- クラウドが台頭する理由とオウンドメディア運用に向く理由
- クラウド利用における注意点
- クラウドに関する注意点を克服するには
- 長期的な運用のために
VPSなどに比べ、多くのメリットがあるクラウドですが、オウンドメディアのインフラとするには、注意すべきポイントもあります。後編では、4〜6をご紹介します。
4.クラウド利用における注意点
サーバーはすべてクラウドにすればいいのか、というと実はそうではありません。いろいろなレイヤーのクラウドサービスはそれぞれ欠点も抱えています。
その中でも、弊社でも現在メインで利用しているAWSについては、「流行りだから」という理由でいきなり採用すると思わぬところで、あるいは予想以上にコストが発生したりしていますので、その辺りについて触れたいと思います。
■従量課金による料金体系である
AWSを始めとするクラウドでは、一般的に転送料を始めとしてさまざまなポイントで従量課金によって料金がかかっていきます。
サーバーを起動しているだけでも、たとえ全くアクセスがなくても時間単位で料金は発生していますし、転送量についてもそうです。サイトの人気が出てトラフィックが増えるほど、サーバーそのものを維持する費用とは別に費用がかかることになります。
便利な機能がいろいろあるからと言って、そのためのサーバーをどんどん立ち上げていくと予想外のコストがかかる結果にもなってしまいます。
また、こららの特徴は、予算化しにくいという問題も含むことになります。
■バックアップや監視などは自力で行う必要がある
正確に言えば仕組みやツールそのものは整っていますので、0から準備するという話ではありませんが、どういった設定で運用していくかなど、細かいところはすべて自分達で検討する必要があります。
セキュリティに関しても、たとえばAWSのWebサーバーであるEC2については、立ち上げただけですと最低限のセキュリティ対策しか施されていませんので(それでも通常のCentOSと比べ、余計なパッケージを含まないようにするなど考慮はされていますが)、自身で設定の調整などが必要となります。
■最高の安定度を誇るわけではない
これは特にAWSについて感じるところです。
もちろんサービスの構成の仕方にもよりますし、観点もいろいろあるかと思いますが、単純にWebサーバーやアラートの仕組みの安定度で言うと、不安定と思われる状況がときおり発生します。
そしてAmazon自身も、通常のWebサーバー(EC2)に高いレベルのSLAを設定しているわけではなく、「99.95%以上で使用できるようにするため商業的に合理的な努力をする」と書いています。
5.クラウドに関する注意点を克服するには
では「とりあえずクラウドを使いたいんだけど」という場合に何を注意すればよいのか、考えてみたいと思います。
■従量課金の問題について
この点に関しては2つ観点があります。
まず、ネットワークトラフィックが懸念となる場合については、IDCフロンティアのクラウドのように従量課金開始の敷居がかなり高めに設定されているクラウドを使う、という方法が考えられます。
多くのクラウドが最初から、あるいはAWSのように最初の1GBを超えたら従量課金対象、となっている中、IDCフロンティアでは「従量タイプは、1ヶ月あたり3,240GBのネットワーク転送量(月間平均トラフィクの場合は10Mbps)が無料」ということですので、一般的な利用ではほぼ気にしなくてよいレベルと言えるでしょう。
また、予算化しにくい、という観点では、運用代行業者を利用する、というのが有効です。
AWSの場合ですとナレコムクラウドやCloud PackといったAmazon認定のパートナーに運用代行を行ってもらうことで、一定のトラフィック(例:100GB単位)までの転送料を定額化したうえでの請求処理、という対応が可能となります。
この場合AWSと直接契約するより単価自体は割高になりますが、こういった会社では1ヶ月の間の一定時間サーバー(インスタンス)を無料で追加できるといった対応も含まれていますので、事前に概算見積りを行なって予算化しやすい料金体系となっています。
■バックアップや監視などの運用体制について
こちらも前述のような運用代行業者を経由することで、一定のメニューでいわゆる「フルマネージド」な運用を行ってもらうことが可能です。
たとえば、IDCフロンティアでは通常の「セルフタイプ」とは別に「マネージドタイプ」を選択することが可能です。マネージドタイプではバックアップオプションや監視オプションが選択でき、電話サポートの窓口も設定されます。
さらに、最初に触れたSaaSであるsixapartの「Movable Type EZ」はとにかく「Movable Type」を使うために特化したクラウドですので、そのためのセキュリティ対策やバックアップ、サポート体制といった部分は十分考慮されています。もし運用したいオウンドメディアがMovable Typeだけで実現できるのであれば、こういった選択も十分有効です。
■安定度について
この点に関してはある意味わかったうえで運用する必要はあるかと考えています。そして、サービスが稼働し続けていることと、データ自体が消えてしまうこととは基準が異なる、という点も覚えておく必要があります。
たとえばAWSでは、静的なファイル設置に特化した「S3」のサービスの場合、データの耐久度(データが消えないで保持できる確率)は99.999999999%と高い値を誇ってはいますが、こちらもSLAとしては99.99%とされています。
この場合、データが消えてしまう確率はほとんどないから納得してください、と言われているようなものですね。
あるいは、やはり稼働率を気にする、という方はもう一桁上の「99.999%」のSLAを保証しているIDCフロンティアなどのクラウドを使用したほうがいいのかも知れません。
6.長期的な運用のために
今までお伝えしたポイントを把握したうえでインフラを選定いただければ、皆さんの使い方に応じた環境はひとまず手に入るのではないかと思います。
しかし、オウンドメディアの運用をしていくうえでPDCAが重要というのと同じ意味で、そのインフラについてもPDCAは重要です。つまり、サーバーのアクセス状況を継続的にチェックしていきながら、リソース増強などの対策を適宜行うことで、初めて安定した運用が可能となりますし、発展させることもできるはずです。
今回はひとまず「選定」という点に絞ってお伝えしていますので、そういった運用時のポイントについてはまた別の機会に触れたいと思います。
オウンドメディアは「やってみる」ことも重要ですが、「続けていく」ということはもっと重要ですので、皆さんもその点を念頭に置きつつオウンドメディア運営を検討してみてください。
以上、ありがとうございました。