消費者が語ってくれない「真実の95%」:ユーザー中心発想でコンテンツマーケティングを成功に導くヒケツ
みなさん、こんにちは! インフォバーンKYOTOの井登です。少し前まで暑くて暑くてヒーハー言っていたのに、今じゃもうすっかり秋の気配漂うよい季節になりましたね。
インフォバーンKYOTOのある京都、烏丸御池では朝晩は肌寒いくらいの風が頬を撫でる日もチラホラ出てくるようになりました。心躍る夏を演出してくれた色々なお祭りもみーんな終わってしまって少しセンチメンタルな気分も漂うこの頃ですが、京都では三大祭のひとつである「時代祭」が10月22日に執り行われます。
時代祭では、延暦時代から明治維新時代までの各エポックごとに、その時代を象徴する様々な衣装を身にまとった行列が洛内を練り歩きます。まぁ言うなれば、壮大で格式あふれる、エレガントな”コスプレ大会”といったところでしょうか?(笑。
この行列も、祇園祭同様、インフォバーンKYOTOのオフィスから特等席に見ることができるので今から楽しみです。見たい! 見たいぞ! という方は、ぜひインフォバーンKYOTOに遊びに来てくださいね。
さて、今回のぼくのコラムのテーマは、「消費者が語ってくれない“真実の95%”」についてです。
ペルソナの有用性について書かせていただいた以前のコラムで、生活者は「自分自身が“本当の意味での”自身のニーズを明確な言葉で語ることができない」生き物である、と書きました。
加えて、“生活者自身が明確に言葉で語ることのできる欲求はせいぜい5%程度である”とも書かせていただきました。
https://www.infobahn.co.jp/ib_column/2483
言語化できない生活者の欲求についてはさまざまな専門家が研究を重ねていますが、その中でもハーバードビジネススクールの名誉教授であるジェラルド・ザルトマン教授はその道の研究における第一人者で、『How Customers Think』という自著の中でマーケターが陥りがちな消費者理解についての誤解について触れています。
本書籍は日本でも一橋大学の藤川佳則教授らによって邦訳され『心脳マーケティング』(ダイヤモンド社)というタイトルで出版されていますので、本コラムでは邦訳版における記載を引用させていただきます。
『心脳マーケティング』の中では、マーケターが陥りがちな“6つの誤った使用理論”として下記の6つをあげています。
2.消費者は自らの思考プロセスと行動を容易に説明することができる
3.消費者の心・脳・体、取り巻く文化や社会は、個々に調査することが可能である
4.消費者の記憶には、彼らの経験が正確に表れる
5.消費者は言葉で考える
6.企業から消費者にメッセージを送りさえすれば、思うままに解釈してくれる
本コラムですべてを紹介・解説するのには少々紙幅が足りないですが、せっかくですのでいくつか選んで見て行きましょう。
まず1つめの「消費者の思考プロセスは筋の通った合理的・直線的なものである」について。
ある製品やサービスに関するニーズ理解のための調査などの際に、われわれマーケターやリサーチャーはついつい、「消費者は“合理的な判断”のもとに製品やサービスを選んでいるはずだ」と考えがちです。
なので「どうしてこの製品を選んだのですか?」とか、「○○というサービスに求めることは何ですか?」などの問いに対して消費者が苦労ながらに語ってくれた答えを「これがまさに消費者の求めていることだ!」と考えて自社の製品やサービスにフィードバックするのです。
しかし、消費者、というよりも人間はそんなに都合よく、合理的にはできていません。
メーカーからのアンケートには、「○○という機能が自分には必要な機能だったから」とか「他社製品と価格やアフターサポートなどを総合的に比較しても、この製品がもっとも良かった」なんて答えながらも、実際には「仲のいい信頼できる友達にすすめられたから」とか、「有名メーカーの製品だしなんとなく安心できると思って」というようなことが理由で製品やサービスを選んだ経験、あなた自身にはありませんか? ぼくはたくさんあります(笑。
次に、5つめの「消費者は言葉で考える」について。
一般的なマーケティング・リサーチなどでは、アンケート形式や、対面式でインタビューを行うなどの調査手法がよく用いられますが、これらの調査手法に共通するのは、調査に使われる媒介が主に「言葉」であるという点です。
もちろん言葉は人間が生み出したすばらしいツールだし、ヒトは言葉によってさまざまなコミュニケーションを行うことは自明の理ではあります。ただし、消費者=相手が考えていること、つまりはおなかの奥の方に潜んでいる“欲求や感情”を可視化するためには、言葉は少々役不足な時があります。
たとえば、乗り物について調査をする際「その乗り物に初めて乗った感想は?」と質問し、被験者が「とても興奮しました」と答えた場合。
この興奮感情は、“楽しさ”を伴うものなのか? それとも“恐怖”を伴うものなのか? で、解釈が大きく変化します。
通常、定性的な調査を行うリサーチャーは、さらに「それはどういった興奮ですか?」「何かにたとえていうならどういう体験ですか?」などと、言葉や聞き方を変えることで正しいインサイトを引き出そうとしますが、冒頭にも書いたように、消費者はそもそも「自身のニーズを明確な言葉で語ることができない生き物」です。
一生懸命言葉を探して説明しようとするけれど、言葉を使って的確に、うまく説明できる消費者は決して多くはありませんし、たとえ説明できたとしても、いろいろな言葉を尽くし重ねて表現した結果、それはそもそも一番最初に「とても興奮しました」と答えた時にココロやアタマにぼんやりと浮かんだ感情とは少し違ったものになってしまっている可能性もあります。
他の4つも同様に、いかに消費者の本質的な欲求を知ることが難しいか? について、研究結果をもとにしたすばらしい指摘をしているのですべて紹介したいのですが、本コラムでは紙幅が足りないので割愛いたします。
興味のある方は、ぜひこの良書を手にとって読んでいただくか、ぼくを勉強会などに呼んでください。ヒーハー言いながらすぐに飛んで行きます(笑。
ね? 消費者のココロを知ることは、女性のココロを知ることと同じくらい難しいでしょ? ぼくもたくさん失敗しました。鈍感だって(苦笑…
さ、ベタなジョークはさておき、これらの2つだけを見ても、消費者から真のニーズや欲求を引き出すことがいかに困難であるか? ということがおわかりいただけるのではないかと思います。
これが、前述した消費者自身が明快に言葉で語ることのできる自身のニーズや欲求は、たった5%である、とも言われる所以です。
本来真実であるはずの残りの95%は取り扱われることも理解されることもなく、あたかも氷山の水面下に沈んだ部分のように外からは見えないままになっているなんて…もったいないですよね?
こういったことを理解せずに、やみくもにマーケティング・リサーチを重ねるうち、企業はついつい暗黙のうちに持っている“前提”や“期待”で、問いの解釈を規定してしまいがちです。
『心脳マーケティング』では、
とすら、言及しています。
では、本来マーケターが知りたかった残りの「真実の95%」に少しでもたどり着くためにはどういうアプローチや調査手法を駆使することが必要か?
次回のぼくのコラムでは、だれでも比較的すぐに試すことのできる3つの調査手法とコツを紹介させていただく予定です。
冒頭ご紹介しました京都三大祭のひとつ「時代祭」が終わった頃にお会いしましょう。それでは皆さま、良い初秋を。ごきげんよう。