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コンテンツマーケティングに欠かせない3つの美徳

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こんにちは。インフォバーンの成田です。
新年度に向けてコンテンツマーケティングの基本を5回にわたってお届けしたいと思います。よろしくお願いします。

 

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「今でしょ!」「じぇじぇじぇ」「倍返しだ!」「おもてなし」……と、2013年は流行語がとても充実していましたね。なかでもわたしの一番のお気に入りは「お・も・て・な・し」。滝川クリステルさんのクリスタルのようにまばゆいハイブリッドな美貌と相まって、日本の美徳を象徴したこの言葉は、世界中に響き渡りました。

さて、日本にはこの「おもてなし」と同様に、日本特有の美徳を反映した美しい言葉がたくさんあります。特にコンテツマーケティングにおいて「おもてなし」と並ぶ重要な言葉が、「もったいない」と「奥ゆかしい」。称して「コンテンツマーケティングの3大美徳」。

コンテンツマーケティングは、要約すると「見込み客や顧客にとって価値のあるコンテンツを提供し続けることで、興味・関心を惹き、理解をしてもらい、結果として売上げにつなげる」マーケティング戦略のことです。

では、なぜこの3つの美徳がコンテンツマーケティングにおいて重要なのでしょうか?
その理由を探っていきたいと思います。

 

おもてなし

「おもてなし」は、滝川クリステルさんもおっしゃっているように、「歓待、気前の良さ、無私無欲」といった意味を持つ言葉です。英語に直訳すると「ホスピタリティ(Hospitality)」が近い意味になりますが、コンテンツマーケティングにおいては「アドボカシー(支援、擁護、代弁)」という英語のほうが馴染みがあります。日本では、米MITのグレン・アーバン教授の著書『アドボカシーマーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業 』で広く知られるようになった言葉です。

アドボカシーマーケティングとは「顧客と信頼関係を築くことを目的に、顧客の意向を最優先し、徹底的に顧客本位で接する、マーケティング手法」と定義されます。もちろん、慈善事業ではありませんので、その先に企業の長期的な利益の獲得をめざしています。

なぜいま、この考え方が注目されているのでしょうか。

情報過多の時代、わたしたちは企業の一方的な押しつけの情報にうんざりしています。そもそも今日のオーディエンスは情報の取捨選択権も持つので、退屈で不要な情報は初めからシャットダウンすることもできます。ソーシャルメディアの普及によって、自ら気軽に情報交換することもでき、企業都合の情報を鵜呑みにすることもなくなってきました。

認知拡大を図るために、広告やキャンペーンがいまなお有効であることは確かですが、一時の興味・関心を惹いたところで、ほかに良いものを見つければすぐに逃げられてしまいます。そこで注目されはじめたのが、たとえ一時的には企業の利益に反することでも、オーディエンスにとっての最善を徹底的に追求するアドボカシーマーケティングの考え方です。

商品やサービスの差別化が難しくなっている昨今、コモディティと化して泥沼の価格競争にハマらないためには、オーディエンスと密なコミュニケーションを図り、信頼関係を築いていくしか、生き残る道はありません。競合相手を見ながら市場シェアの獲得に走るのではなく、オーディエンス心理のシェアを獲得していかなければならないのです。

マーケティング学の第一人者である嶋口充輝先生の著書『ビューティフルカンパニー 市場発の経営戦略』の言葉を借りれば、時代は、従来の市場占有率を競う戦争型市場から、消費者の心をつかむ恋愛型市場に変遷しつつあるのです。じっくり時間をかけながら、少しずつ長く愛しあうことに安心感と信頼感を覚える――I love Youを「わたし、死んでもいいわ」と訳した二葉亭四迷のように、消費者のためにいかに自己犠牲を払って信頼を獲得するか。消費者を支援し、擁護し、消費者の利益を最優先する――それがアドボカシーマーケティングであり、おもてなしの心得なのです。

 

もったいない

消費者の利益を最優先する美徳が「おもてなし」とすると、「もったいない」は企業が持つコンテンツ資産の有効活用を指します。他メディアを使って広告やキャンペーンに予算をつぎこんでも、なかなか自社の資産として残りません。これらコンテンツ資産が一過性の利用で終わってしまうのは非常にもったいない。コンテンツマーケティング、そして、その拠点となるオウンドメディアが重視される理由も、この「もったいない」という思想からきています。

ここでは、戦略的コンテンツマーケティングを通して、5つの「もったいない」が起こる原因と、それをどのように解決していけばよいかを考えてみたいと思います。

    1. どんなに宣伝しても注目されない

これはターゲットを絞らずに不特定多数のオーディエンスにムダな資金を費やしていることから起きます。もったいないですね。コンテンツマーケティングでは、本当にほしい情報を求めているオーディエンスにターゲットを絞り、訪問してもらうよう適切なコンテンツを配信することで、購買ファネルに沿って効率よく「訪問客→見込み客→新規顧客→優良顧客」へと育んでいくことを目的とします。

    1. すぐ飽きられて長続きしない

せっかく多額の予算を費やして広告やキャンペーンを打って集客をしても、訪問客がインセンティブ狙い、暇つぶし、冷やかしといった一過性のオーディエンスではもったいないですね。コンテンツマーケティングでは、まずオーディエンスが抱える悩みや課題に対する解決策を提示し続けることで、信頼関係を築いていきます。

    1. 興味・関心を持っているかわからない

自社サイトを訪問しているオーディエンスが、自社の商品やサービスに興味を持っているかわからない――これもターゲットを明確に絞り込んでいないことから起こります。もったいないですね。コンテンツマーケティングでは、どんなコンテンツにどんな属性のオーディエンスが興味・関心を持っているかを見極め、常にオーディエンスに関連性の高いコンテンツを配信することで、狙ったターゲットだけを獲得します。

    1. お金をかけても資産として残らない

よそのメディアに間借りして広告を打つのは、手っ取り早く認知拡大を図るには有効です。しかし、長期的戦略に立ったとき、それは自社の資産として残らない。もったいないですね。コンテンツマーケティングでは、オウンドメディアを拠点としたコンテンツが資産となって、ソーシャルメディアや影響力のある他メディアに拡散するなど、継続的にオーディエンスに届けます。

    1. ライバルと差別化ができない

競合他社がひしめくレッドオーシャンにおいて、商品スペックだけで勝負をするのは消耗戦に陥るリスクがあります。もったいないですね。オーディエンスの悩みや課題を解決する情報を提供することで、オーディエンスに気づきを与え、オリジナリティを訴求したコンテンツを発信していくことで、ブルーオーシャン(新しい市場)を創出することができます。

これら企業にとって多くの「もったいない」状況から抜け出すには、オーディエンスにとって価値があり、興味・関心を抱いてもらうコンテンツを配信することが、いかに重要であるかを示しています。

 

奥ゆかしい

「奥ゆかしい」。まずその語源を見てみましょう。Yahoo!辞書によると……

1) 深みと品位があって、心がひかれる。深い心遣いが感じられて慕わしい。
2)「奥行かし」で、心がひかれる意から、奥にひそむものに強く心がひかれる。さらによく知りたい。

『源氏物語』の若紫二章には、こんな一文があります。

「ねび行かむさまゆかしき人かな」

現代語に訳すと「成長していく先を見てみたい人だな」

奥ゆかしい人は、自分の主張を露骨に口に出すことはありません。他人に対しても深い心遣いがあります。まさに日本人らしい美徳です。奥ゆかしい――それは焦らしとチラ見せの真髄とでも言えましょうか。東大寺の大仏殿、秘宝館、貸切風呂、祇園……たしかに日本にはそんな「奥ゆかしい」伝統文化が数多くあります。

自己主張をするのではなく、オーディエンスの立場になって、オーディエンスの利益を最優先で考えることで、気づいたらオーディエンスはいつの間にか、あなたに興味・関心を抱き、奥ゆかしい思いになり、あなたの虜になっている――。「訪問客→見込み客→新規顧客→優良顧客」という購買ファネルのサイクルに導くコンテンツマーケティングは、従来のふてぶてしい強引なプッシュメディアから一歩引いて、オーディエンスに奥ゆかしい(その先の奥まで見てみたい)と思わせる戦略なのです。

「おもてなし」「もったいない」「奥ゆかしい」――この3つの美徳を生かしながらコンテンツマーケティングを活用することが、勝者になる一番の近道なのです。

 

成田幸久

フェロー。AMEX会員誌、『ワイアード』日本版、JAL機内誌などで副編集長を務めた後、2004年インフォバーン入社。ニフティのブログサービス『ココログ』の立ち上げ時に、眞鍋かをりなどの著名人ブログをプロデュース。ほかにPC・モバイルと連動した通販誌『カタロガー』編集長、セブン-イレブンとヤフーの共同事業メディア『4B』の編集長を務めるなど、数多くのWebメディアの企画・運用を手がける。