Webメディアの「いま」と「未来」を考える ─「News Summit 2014」レポート
新聞やテレビ・Webなど、さまざまなメディアのポテンシャルを探ることを目的としたカンファレンス「News Summit 2014」。6月25日(水)に六本木ブルーシアターで開催され、「キュレーションメディア」や「バイラルムービー」など、近年Web界隈で話題のテーマが議論されていました。
本記事では、その中で、インフォバーンCEO・今田素子が登壇した、Webメディア関係者のトークセッション「ケーススタディ:成功するメディア作りと運用」の様子をご紹介。モデレータを務めるのは、ターゲッティング株式会社・藤田誠さん、登壇者はヤフー株式会社 メディアサービスカンパニー・米谷昭良さん、TABI LABO・久志尚太郎さんと今田です。
最初に、それぞれの事業内容や近況について。今田は、主にグループ企業であるメディアジーンの事業内容と最近の記事への流入について報告していました。
メディアジーンのメディアにおいて、Yahoo!などのポータルサイトやソーシャルメディアの影響はいまだに強力。ですが、最近の動向として生活者の情報取得環境の変化によって、キュレーションメディアからの流入が増加しているそうです。
続いて、藤田さんからゲストの3名に対して、5つの質問が投げかけられました。うち4つの質問の中から、今田の回答を中心にご紹介します。
1.Webメディア運用のコツや気をつけていることは?
藤田さん(以下、敬称略):Webメディアを運用するうえで重要なのが、コンセプトや人員体制。メディアジーンでは、どのような組織で運営していますか? またメディアを成功させるためには何を重視すれば良いのでしょうか?
今田:メディアジーンでは8つのメディアを展開しており、合計で1億3600万PV、1900万UUを数えます。1日に7~15本ずつ、全体で1日に100本程度の記事を更新。メディアの熱量とクオリティを一番重視しています。
藤田:メディアの熱量を生み出すのに必要なことは何ですか?
今田:難しいですが、やはりファン。特にリピーターの獲得が、メディアとしての熱量につながるのではないでしょうか。以前の調査で「ギズモード・ジャパン」には、1カ月に200回以上訪問するユーザーが19%もいることがわかりました。
藤田:品質を担保するために工夫されていることはありますか?
今田:編集長のつくりたい記事やメディアの方針を、しっかりと、かつ綿密に打ち出すことが重要ですね。メディアジーンの媒体は、それぞれ3~5人の編集部員と300人程度のライターで運用中。ほかのどの要素よりも、おもしろいコンテンツをつくれるということを重視した採用を行っています。
2.マネタイズ方法の現状と課題は?
藤田:どのWebメディアにとっても頭痛の種である、マネタイズ。ディスプレイ広告やネイティブアド、課金制…。メディアで稼いでいくためのヒントは見つかったのでしょうか?
今田:メディアジーンでは、3年くらい前からスポンサードポストに力を入れて、ターゲットメディアならではの価値を考え続けています。スポンサードポストのようなネイティブアドは、どのメディアにとっても新しい収益源。マネタイズをしっかりすることで、キュレーションメディアとwin-winの関係にならないといけません。
3.オーディエンスデータは誰のものか?
藤田:メディアの財産である、オーディエンスデータ。一次発信者、ポータルサイト、キュレーションメディアといった関係者のうち、誰がこの情報を握るべきでしょうか? また、マネタイズに生かすためにはどうすれば良いのでしょうか?
今田:データの利用方法は外部と考えてもいいですが、絶対にメディアのものであるべき。オーディエンスデータを渡してしまったら、メディアの財産がなくなってしまいます。オーディエンスをマネタイズしていくのがメディアのビジネスなので、そのデータは慎重に扱っていく必要がありますね。
藤田:ユーザー数が少ないターゲットメディアでは、オーディエンスデータをうまく使わないといけないですよね。オーディエンスデータの提供は今後重要になっていきそうです。
今田:外部といっても、一緒にビジネスできる相手と共有するならOKなんですけどね。
4. Webメディアの未来はどうなる?
藤田:キュレーションメディアの台頭もあり、Webメディアは岐路に立たされています。今後、Webメディアはどうあるべきなのでしょうか?
今田:メディアビジネスの将来は暗いです。新聞・雑誌を含む一次情報メディアでは、紙がWebの情報源になっている会社が多く、Webメディアそのものはなかなか成功しません。一次情報メディアにせよ、アドテクにせよ、どんどん変化していきます。しかし、Webメディアはその変化についていけていません。メディアの主導権がブランドからオーディエンスに移っている今、メディアが健全に成長していけるビジネスモデルをつくっていくことが重要です。
おわりに
Webメディアにとって避けては通れないマネタイズという課題。情報取得の手段が変化しつつある今、メディア運営者自身がどう解決すべきかを考えていかなければなりません。救世主となりうるネイティブアドは、メディアとオーディエンスを守るためにも、運用には慎重を期す必要があります。これからも、Webメディアの試行錯誤は続きそうです。