お正月に読んでおきたいオウンドメディア本5冊
こんにちは。コンテンツ開発ユニットの成田です。
今回はオウンドメディアを運営するにあたって、ぜひ読んでおきたい本を5冊紹介したいと思います。
今年はオウンドメディア、コンテンツマーケティングがバズワードになった1年ですが、いまだにキャンペーンやプロモーション、ペイドメディアの延長線上で解釈されることが多い、というのが実感です。また、大企業のオウンドメディアの成功事例ばかりを熱心に追いかける人たちも多く見られました。お正月は、そんなオウンドメディアフィーバーにうなされた頭を冷やし、改めてオウンドメディアとはなにか? について考えてみるいい機会かもしれません。
■アイデアは才能ではない
『アイデアのちから』(チップ・ハース+ダン・ハース著)
オウンドメディアを運営しているなかで、「ネタがすぐに尽きる」「おもしろい記事を作れない」と悩む方は多いのではないでしょうか。本書はそんな「アイデアの枯渇」にヒントを与えてくれる一冊。アイデアはいかに “発想” するかではなく、どう “構築” するかについて教えてくれます。つまりアイデアは「枯渇したり、思いつく才能」ではなく、一定の視点に沿って考えれば育てられるということが提唱されています。その一定の視点とは以下の6点。
- 単純明快である(Simple)
- 意外性がある(Unexpected)
- 具体的である(Concrete)
- 信頼性がある(Credible)
- 感情に訴える(Emotional)
- 物語性(Story)
アイデアがよく浮かぶ人と、アイデアを出すのが苦手な人の境界線はただひとつ。この6つの条件を満たす考え方を「構築する」術を身につけるか否か、です。
「アイデア=バズねた」という強迫観念に囚われる方が多いかもしれませんが、オウンドメディアにおけるアイデアとは、あくまでもユーザーとコミュニケーションを図り、エンゲージメントを築くためのものです。「おもしろいアイデア」に囚われるあまり、本来の目標を見失わないよう気をつけたいですね。
『アイデアのちから』を簡単にまとめたスライド資料はこちら
愛されるオウンドメディア7つの条件
コンテンツ作りの三原則
■コンバージェンス(融合)すべきは企業組織
『CONVERGE 超先進企業が駆使するデジタル戦略』(ボブ・ロード+レイ・ヴェレズ著)
米レイザーフィッシュ(ITコンサルタント会社)の元CEOと現CTOの共著である本書は、主に同社で扱った多くの成功事例を挙げながらデジタル戦略について書かれていますが、彼らの提唱するキーワードは「テクノロジー、クリエイティブ、メディア」のコンバージェンス(融合)。
さまざまな「テクノロジー、クリエイティブ、メディア」がコンバージェンスした先進企業の最新事例は、まさにデジタル戦略のノウハウの宝庫。しかし、コンバージェンスと同様に彼らが掲げる下記のコアメッセージ「デジタル戦略に強い組織を作る5原則」は、デジタルマーケティング業界のプロたちより、むしろオウンドメディアを始めようとする、あるいはすでに運用をしている企業のWeb担当者に刺さるに違いありません。というのもWeb担当者の最大の障壁は、自社の組織だったりすることが多いからです。この5原則があえてクローズアップされているのは、実践するのが難しい旧態依然の企業がそれほど多いという証でしょう。
- 常にユーザー中心で考えろ
- 縦割り構造を廃止せよ
- スタートアップのように素早く動け
- 部門間の壁を越えて、協力せよ
- スローガンで売るな、サービスで売れ
■たかが事例、されど事例
『商品を売るな』(宗像淳著)
コンテンツマーケティングについて書かれたこれまでの翻訳本は、ある程度コンテンツマーケティングの知識がないと読みこなすのがけっこう大変です。翻訳本で紹介されている事例は、あくまでも米国市場のものですし、また比喩と修飾語がふんだんに散りばめられた独特の表現が多いのも、日本人にとっては違和感を抱かざるを得ません。
本書はそんなストレスを一気に解消してくれる安堵感を与えてくれます。事例も日本の企業のものですし、自社の成功事例をここまで教えちゃっていいの? というほど立ち上げから運用フェーズに至るまでの経緯を赤裸々に紹介してくれています。
一見分厚い本ですが、おしゃれなイラストと読みやすいレイアウトで構成されているので、3時間もあれば読破できると思います。これまでオウンドメディアやコンテンツマーケティングに関するセミナーに参加したり、本を読んだりしたがまだピンとこない、という入門者の方にはぜひ一読をオススメします。
■突き抜けたコンテンツ
『インバウンドマーケティング』(ブライアン・ハリガン+ダーメッシュ・シャア著)
インバウンドマーケティングとコンテンツマーケティングの違いとは? という定義をめぐる議論をよく目にしますが、そんなナンセンスな議論に悩むヒマがあったら、1つでも多くまともなコンテンツをつくるほうが賢明でしょう。
そもそもインバウンドマーケティングはアウトバウンド(押し売り、土足)マーケティングへのカウンターワード。そういう意味では、コンテンツマーケティングもアウトバウンドマーケティングの対極にある考え方なので、同工異曲といっていいのではないでしょうか。
たとえば『オウンドメディアで成功するための戦略的コンテンツマーケティング』の共著者であるロバート・ローズ氏はCONTENT MARKETING LABのインタビューで「インバウンドマーケティングは、基本的には販売プロセスを促進するための手法であり、その意味においてはコンテンツマーケティングの一部分だと私は考えています」と語っています。
一方、『インバウンドマーケティング』(ここで紹介している本とは関係ないです)の著者、高広伯彦氏はWeb担当者Forumで「コンテンツマーケティングもインバウンドマーケティングの一部。ただし、インバウンドマーケティングはコンテンツを作るだけで終わらない。一方、コンテンツマーケティングは、コンテンツで集客することに注力していることが多い」と書かれています。
どちらも至極もっとも、です。
「立場が違えば正義もそれぞれ」という国際関係と同じですね。
さて。
本書はHubSpotの共同創設者の2人によって書かれているものの、HubSpotの実績自慢の趣はまったくなく、「インバウンドマーケティング」というより、むしろソーシャルメディアの重要性を説いている点がとても興味深いです。そしてソーシャルメディアで生かされるためには「突き抜けたコンテンツ」が必要不可欠だとも。数あるマーケティング本やオウンドメディア本のなかでも、コンテンツの重要性について真正面から取り組んで紹介している貴重な書です。
■要するに、愛と情熱なのだ
『メディア化する企業はなぜ強いのか?』(小林弘人著)
現場でオウンドメディアの立ち上げに携わっていると、オウンドメディアの本質を理解してもらうまでに時間がかかりそうだな、と思うことがしばしばあります。本書は弊社インフォバーンの代表取締役CEOの小林弘人が3年前に上梓したオウンドメディア本なのですが、これだけテクノロジーの進化が著しいデジタルマーケティング業界において、まだ進化していないものがあるのだと、改めて痛感します。
それは「人」と「組織」です。
小林は時代を反映した造語を生み出すのがとても得意で、本書でもあちこちでユニークな造語がちりばめられていますが、なかでもわたしのお気に入りは「上司説得型マーケティング」。日本の企業は上司を説得するための大義名分をほしがるために、せっかくの理念や施策が骨抜きになるという意味で生まれた造語です。日本人の「事例好き」の理由もここにあると感じます。「あの会社がこれで成功しているのだから、やってみる価値がある」とか「あの会社がこれだけの予算をつぎ込んでいるだから、うちも」とか。
いきなり「そのコンテンツ、バズるの?」とか「いくらかけたら100万PVになるの?」とか「◯☓社みたいにできるの?」とか。そこには愛も情熱もありません。小林はメディアを作るうえで「作り手が冷めていると、コンテンツは無機質でつまらないものになります。テクニックが洗練されていなくても、そこに作り手の愛さえあれば、不思議と魅力的かつパワフルなものが創出できることがあります」と主張します。
あなたはいま、上司や会社を説得したくて他社事例を探しているかもしれません。しかし、事例を見て参考にするときは、予算やコンテンツ量やPVではなく、そのメディアの運営者に愛と情熱が感じられるかどうかを見るべきでしょう。そして「なんか熱いなあ…」と感じたら、真似してみるべきです。もちろん手法ではなく、「愛と情熱」の抱き方を。