TOA(Tech Open Air)2017とベルリン視察ツアー・レポート Part 2
前回に続き、株式会社インフォバーンと株式会社JTBコーポレートセールス共催によるベルリン視察ツアーのレポート第2段をお届けします。*なお、9月14日(木)に報告会も予定しています。詳しくはこちらをご参照ください!
公式視察ツアー日程
ツアー期間:7月10日(月)~7月16日(日)
Part 2(本記事)では3日目の7/12(水)、7/14(金)の活動を中心にご紹介します。
これまでのレポート:https://www.infobahn.co.jp/ib_column/9367
7/10 :移動(羽田空港~ベルリン)
7/11 :オフィス・施設訪問
7/12 :TOA視察
7/13 :TOA視察・施設訪問
7/14 :TOA視察、施設訪問
7/15, 7/16 :移動(ベルリン~東京)
群を抜くクオリティ、写真共有プラットフォームのEyeEm本社を訪問
7月12日、TOAの開催初日の夕方、視察団はクロイツベルクを目指しました。トルコ移民が多く住むクロイツベルクは、若者やアーティストに愛されるディープなカルチャー発信地として知られています。わたしたちは、その一角にオフィスを構える「EyeEm」の社屋を訪れました。
EyeEm社は全世界で2,000万人以上のユーザー数を抱える写真共有サービスであり、そのクオリティの高さでは群を抜いています。ハイアマチュアやプロが自分の写真を販売できるプラットフォームとしても知られ、AIによるキュレーションも行われています。写真好きなら要チェックのAppでしょう。
同社はベルリン発の有名スタートアップ企業として、音楽共有サービスの「Soundcloud」と並び、世界中のユーザーから愛されています。また、アウディやメルセデス、ライカなどの企業が、ユーザーにそれぞれ異なるテーマを投げかけ、それに合わせてユーザーが写真を投稿する「Mission」と呼ばれるコンテストが人気を博しています。
突然の豪雨のなか、わたしたちを出迎えてくれたのは、同社共同創業者であるゲン・サダカネ氏。彼はグローバルなクリエイティブ・エージェンシーのアート・ディレクターとして多くの賞を受賞し、ここベルリンで友人たちとEyeEmを起業しました。
同社は1階にギャラリーをもち、そのオフィスは白色を基調として、シンプルでいながらとてもクール。サダカネ氏は、起業からの道のり、世界の各都市にあるユーザー・コミュニティが主催するリアルな写真展や、同社が刊行する紙の写真集などについて説明してくれました。
視察団との質疑応答も盛り上がり、商談にも花が咲きました(?)。サダカネ氏の率直な語り口が印象深いミーティングでした。
同日夜、インフォバーンでは、シュプレー川で小型船をチャーターし、「インフォバーン・ナハト」と銘打ったディナー・クルーズ・パーティーを開催し、TOAに参加している日本人の皆さんを招いて、ささやかな宴を催しました。
循環型経済を追求する、CRCLR(サーキュラー・エコノミーハウス)とは?
14日、わたしたちが訪れたのは、創業200年前のビール醸造所の倉庫をリノベーションしてオフィスを構える「CRCLR(サーキュラー・エコノミーハウス)」です。
迎えてくれたのは、創業者のアリス・グリンドハマー氏。彼女はドイツのリサイクル業界大手のALBAグループにて事業開発者として、廃棄物の管理プロセスをビジネスに実装してきました。
そんな彼女が起業したのが、このCRCLRです。
彼女の話をする前に、日本人には耳慣れないサーキュラー・エコノミーについて説明します。サーキュラー・エコノミーとは、資源を再生・再利用し、循環型の仕組みの構築を目指した経済活動を指します。昨今、注目を集める分野でもあり、再利用の対象には産業廃棄物だけではなく、遊休資産なども含まれます。ベルリンでは行政を含め、このサーキュラー・エコノミーの取り組みを支援しています。
CRCLRは、ベルリンで最初のサーキュラー・エコノミー実現のためのリアルな拠点として2016年に創業しました。現在、ワークショップ、ミートアップ、ハッカソン、ソーシャル起業家向けセミナー等のイベントを通じて、有志とプロジェクトをつなぎ合わせています。今後現在の施設を3.5階建てに増床し、より大々的な展開を予定しているようです。
印象的だったのは、メセナなどと異なり新たな経済成長として、サーキュラー・エコノミーを捉えている点です。CRCLRのオフィスにあるテーブルや机もすべて、産業廃棄物の再利用でした。
世界が注目、反逆の都市開発公団(?!)によるHolzmarkt(ホルツマルクト)を見よ
14日最後に訪問した先は、シュプレー川沿いにある18,000平方メートルの広大な場所、「Holzmarkt(ホルツマルクト)」です。
ここには、ベルリンのクラブ・カルチャー・シーンにおいて数々の伝説を残したBar25がありました。Bar25については、ネット上にいくつか当時の映像記録もあるので、興味ある方はチェックしてみてください。
2004年、同川沿いの敷地に高層ビルやラグジュアリーなホテル、ショッピングモールを建造する「メディア・シュプレー構想」がもちあがり、住民らの反対運動が起きました。運動が奏功し、計画は4年後に頓挫します。
Bar25のオーナーであるJuval Dieziger氏が組合を立ち上げ、スイス年金基金ほかから協力を得て、この土地を安価に借りることができました。
ここから、Holzmarktの快進撃がはじまります。有志が自分たちで組み上げた低層建造物が次々と完成。いちいち行政の規制とぶつかりそうになるも、その都度、見事に障害を回避。クラブ、レストラン、スパ、宿舎、映画館、保育園までが立ち並び、現在はコ・ワーキングスペースを建造中です。
もっともベルリンっぽさを感じたいなら、このHolzmarktを訪れると良いでしょう。
もはや政府要人もお気に入りのスポットであり、わたしたちの訪問中も、すぐそばでベルリン市長とシカゴ市長が昼食を摂っていました。地域コミュニティのハブとしてさらに発展すべく、建設や改築が常に計画されています。
本来ならアナーキーなコミューンにしか見えないHolzmarktでは、サブカルチャーとメインストリームが交差しており、世界中から視察団が訪れています。このような場にこそ今後の都市計画における未来の萌芽があるのかもしれません。
近隣住民や、さまざまな職業の人たちが創発しあえる場所として、また、先述のサーキュラー・エコノミーを包括するかたちで、Holzmarktはベルリンのユニークな一面を披露しています。それもまた、スタートアップ・エコシステムと切り離せない都市、ベルリンがもつDNAなのではないでしょうか。