自動車保険『&e(アンディー)』が、本気で「事故のない世界」というパーパスに取り組む理由
テクノロジーと保険を組み合わせ、事故が起きた後ではなく、事故が起きる前からドライバーに寄り添う、イーデザイン損保の自動車保険「&e」。「事故のない社会の実現」を目指す、今までにない保険商品です。
今回はイーデザイン損害保険株式会社(以下、イーデザイン損保)CMOの友澤大輔さんを招き、「&e」の商品そのものを事例にCX(顧客経験価値)がどうあるべきか、またはDX(デジタルによる変革)するには何が大切なのかをお話しいただきました。ファシリテーションは、株式会社インフォバーン(以下、インフォバーン)の代表取締役社長・田中準也が務めました。
※お車をお持ちの人は、まずは気軽に『&e』ホームページや見積りページなども合わせてご覧ください。
「事故のない世界」を目指す、自動車保険「&e」ができるまで
友澤大輔氏(以下、友澤):「&e」というイーデザイン損保の新しい自動車保険がなぜ生まれたのか、どんな特徴があるのかも踏まえてお話をしたいと思います。この商品は、“共創”、共に創るをベースにマーケティングを含めて全体の設計をしていまして、今回のようにセミナーといった取り組みも含めて、一緒に創っていければなと思っています。
わたしは、いろいろな会社でマーケティングなどをやってきました。今日もCXやDXの話になりますが、いわゆるCとかDが大事なのではなくて“X”、つまりトランスフォーメーション、そして体験を大事にしています。DXの細かい話や「変革をするには何が大事か」を、生のエピソードでお届けしたいなと思っています。
さっそく、イーデザイン損保の話になりますが、わたしが入社したのが1年前ぐらいです。「事故対応満足度94.3%」や「専門家が選んだ自動車保険ランキング7年連続第1位」、「グッドデザイン賞受賞」など、東京海上グループの安心感をうたった会社でもあります。
我々がどんなことを考えているか。
インターネットを使った生命保険や損害保険は、金融の中でFinTech(フィンテック)とかInsurTech(インシュアテック)とか言われていますけど、DXされた顧客体験のなかでは、そもそも走行前や走行中からサポートしないと本当の意味で事故の補償はできないという論調に、業界全体が変わりつつあります。
だからこそ、イーデザイン損保も他社さんも、ドライブレコーダーなどデジタル化された保険商品に関して、補償に限らない予防や見守りを訴求し始めているんです。
我々も数年前ぐらいから、単なる事故の補償だけではない、走行中や走行前もどのようにケアしていくのかを、非常に大事にしてきました。本来、事故対応力が価格よりも大事ですが、(自動車保険は)いつ事故になるかわからないけれど契約するものなので、事故に遭ったことがない人は“自分ごと化”できない、というのが課題です。
だからこそ、顧客と「どうコミュニケーションしていくのか」が、この業界に共通する課題なわけです。そこで、我々が出した答えの一つが「パーバス・ドリブン」です。
単なる保険を超えて、パーパスを実現することを目指す。そのための仕組みづくり
「&e」というブランドは、事故の後に補償されるものであるという前提を超えて、「事故のない世界をどうやって作っていくのか」をパーパス(存在意義)に掲げました。これは究極(の考え方)ですが、顧客体験を最優先にしてどこまでやり切れるか、グループ全体としても徹底的にやろうとしています。
本来は効率を意識して「獲得」の方向に行きますが、焦らずにしっかり準備を重ねて、ゆっくり市場を作って行こうと考えています。それぐらい、「パーパス・ドリブン」って大事なことなんですけど、それをどこまでやり切れるかっていうのが今回の「&e」という商品でも非常に重要になっています。
新しい商品を「保険」として捉えずに、どうやって「事故を無くす活動体」にしていくのか?
最近、ナラティブ(語り)とかトライブ(共通の興味関心を持った集団)というワードがよく使われますが、「&e」もトライブなので活動体としてどう見せて、どういうセグメント(顧客層)にどう伝えていくのかが大切。
だからこそパーパス・ドリブンが大事だし、(顧客が)自分のカーライフを大事にしてくれると思うサービスにしていかないと、本当の意味でのパーパスが実現できないし、共感もしていただけない。
ですので、単にパーパスやナラティブ、トライブをマーケティングの“フレーム”で語るというよりは、本当の意味でそれを実行に向けてつなげていき、会社全体の動きとしてどうしていくのか、パーパスというコミュニケーションの上で頑張ってやっているところです。
「&e」のコアになっているのが、チロルチョコサイズぐらいのセンサーです。ダッシュボードなどに置いていただいてスマートフォンと繋げていただくと、センサーがプライバシーをケアした上でいろいろなデータを取得します。
このセンサーと保険サービスの連携がミソになってきます。
事故に遭ったときや車に乗っているときの挙動データをセンサーによって取得する。これが安全運転支援に置けるテクノロジーで、CXを向上させる1つの点です。ここで取得した運転スコアとレポートデータを元に運転支援をアプリで行います。今、先行して使っていただいている方々がいらっしゃいまして、アンケートを取っているんですが、91%ぐらいの人たちがスコアや安全運転プログラムのレポートを見て「安全運転をする意識が高まった」と回答しています。
単なるスコアに見えるんですが、人は「見える化」すると自分の課題が「言える化」できて、「言える化」すると「直せる化」ができます。この、「見える化」できるというのが、非常にポイントになっていますね。すべての挙動を正確に取れるわけではもちろんないですが、傾向だけでも「見える化」することによって安全の意識が高まって、結果的には事故に遭わない。で、事故に遭わないと等級が上がり、等級が上がると将来的に保険料が安くなる可能性がある。現時点では安全運転のスコアはポイントで還元(リワード)する仕組みにしています。
また、潜在的にユーザーさんにとって価値が高いのは、IoTセンサーが取得する「今どこにいてどんな事故に遭っているか」のリアルタイムデータです。事故直後に連絡をされるとパニックになっていたり、家に帰って事故の連絡をする場合はどこでどんな事故に遭ったのか、あまり覚えていないんですよね。
それが事故対応時の最大のペイン。
だからこそ、保険会社や保険代理店さんにお金をお支払いしてお任せしている場合も多いのではないでしょうか? これはこれで非常にいいサービスです。でも、本来はこういうものって、デジタルが一番強いはずなんです。「&e」はそこにDX(デジタルトランスフォーメーション)を差し込んでいます。
本来、当人が覚えておかなくてはいけないことをテクノロジーに覚えてもらう。正確な位置情報だけでなく、どれだけの衝撃を受けたかまでログで残ります。こうした情報をご契約者様が過失割合算出に使うなど可能性は非常にいろいろあります。
事実によって事故比率を決められるように、踏み込もうとしているのが「&e」です。
Youtube: https://youtu.be/Z4vZl-0Lu1o
他企業が競合になるときもあれば、共創するパートナーになりえる時代
田中準也(以下、田中):「&e」について友澤さんからいろいろおうかがいしましたが、ここから質問をしてさらに掘り下げていきたいと思います。
「事故を無くしたい」「素敵なカーライフを」「素敵な生活を」と考えると、それを掲げている企業はすでにあると思います。 例えば、事故を無くしたいのは自動車メーカーも一緒だし、あるいはカーナビゲーションの会社も同じことを考えると思うんですけど、そういう企業は顧客を奪い合う競合企業になるのでしょうか? もしくはサービスの質を高め合う共創企業になるのでしょうか? そしてそのようなディスカッションは、社内でありますか?
友澤:そういうディスカッションはありますよ。今だとより「競合化」していきますね。
社内でもよく話すんですけど、車が自動運転になると、より安全になり保険がいらないし保険がなくなるっていうシナリオもあるとは思うんですけど、それ以上に目の前に起こっている現実は、自動運転よりも車のサブスクリプションなんです。保険も何もかもがサービスに包含されているという問題に、保険業界は直面しています。そういうところと一緒にやりましょうか? っていう話ももちろんありますし、一方で勝手にやるっていう流れもある。
であれば、車ぐらい大きなデバイスになると無理だけど、もっと小さいデバイス、今回のセンサーみたいなものと組める可能性はあるんじゃないか、と。そのときにほかの企業が競合になるときもあれば、共創するパートナーにもなり得て、(デバイス選びがひとつの)分岐点なんですよね。だからこそ、(他社さんと)競合じゃなくて、共創できるパートナーになりたいと思っているんです。
ちなみに、わたしのミッションのひとつにアライアンス(業務提携)っていうのがあるんですけど、アライアンスパートナー、色んな所と組んでいくっていうのがマーケティング戦略の中の大きな柱にもなりつつあります。
田中:自分で自動車保険を契約したことがない人が(会場に)多いので、ダイレクトとダイレクトじゃない自動車保険の違いが理解しづらいと思うんですけど……。同じような補償内容だったら、ダイレクトの方が安いですか?
友澤:はい。
田中:途中のオペレーティングコストが少ないからですね。ただし、IoTセンサーやアプリなど「色々とついているからこの価格」という形で言えば「&e」は普通の保険と似ているから、すでにダイレクト(自動車)保険じゃなくなっている。うまい言い方が思いつかないんですけど、これをグループ内の東京海上日動火災保険株式会社でやってもおかしくないというか。イーデザイン損保が「&e」に注力するきっかけはあったんですか? そもそも友澤さんが入社される前から開発をされていたのか、どのぐらいの期間でスタートしたのでしょうか?
前澤:「&e」のコンセプト設計などは、3年前ぐらいからです。
田中:そんなに短期間なんですか?
友澤:そういう意味では、かなり(商品の設計からリリースまでが)早いです。
まずは、社内のマインドセットを変えることからはじめる
田中:抵抗勢力みたいなものはなかったんですか? 「&e」をやることによって、コールセンターやオペレーションセンターの人材がいらなくなってくるじゃないですか。
友澤:例えば、イーデザイン損保の中の抵抗勢力が新しい商品について言うことは「言っていることはわかるんだけど、実際の契約数がうまくいかないんじゃないか?」という“現状維持バイアス”がかかっている人が、結果的には抵抗勢力になっています。
社長の桑原が一番時間をかけて、身を削っているのは、イーデザイン損保に関わるさまざまな人とのパートナー構築のためにマインドセットを変えることです。ここをやりきることを徹底しているので、一緒に仕事をしていて気持ちいい。
田中:社内改革するぐらい、大きな問題ですね
友澤:最も力を注いでいますね。今でも既存商品と「&e」で2、3年ぐらい並行運用していくつもりなんです。そうすると、当たり前ですけどユーザーの皆さんには二択となり、結果的に迷わせてしまう可能性がある。であればしっかり我々の本気を見せて、「良いものだから一緒に共創してほしい」と考え、Webサイトや広告はほぼ「&e」一色にしました。
田中:そもそもバイアスを持っていて、そういう目で見ている方からは、追加オプションみたいに見られると、本来目指している方向にならないですよね?
友澤:そうです。「&e」をこれからの主力にしたいと思っていたのに、この半年間で起こってきたのは「(既存商品の)追加機能が出た」と誤解されてしまったこと。だから、一気に「&e」に変更していこうとしていますね。そういうことも含めて、マインドセットを変えていくというのが、イーデザイン損保でやっている意識改革ですね。
さらに大変なのが、グループ全体でディーラーなどの(商品を)売っている営業の意識改革。今はドラレコの普及率が50%を超えているんですよね。保険会社が提供するドラレコがでてくると、今持っているドラレコを外して保険会社のドラレコをつけなくちゃいけないのか?と。ユーザーにとっては利益にならないようなことを、お客様に強いてしまう。
CMOの役割をまっとうするための、チームづくり
田中:そもそも友澤さんのチームって、どんな構成なんですか? CMOとして君臨されているわけじゃないですか?
友澤:(笑)。今年ぐらいからチーム制をなくしたんです。
田中:ほう。
友澤:CMOがいて、チームリーダーがいて、プロモーションチーム、PRチームを全部なくして、ほぼフラットな組織です。
田中:友澤さん以外、フラットですか?
友澤:そうです。でも一方ではわたしの管掌というのが、セールスとマーケティングとアライアンス。PRもやるし、もちろんTVCMや企業さんと組んで色々やるし、こういうセミナーもやるし、なんでもやっていますね。その中のエグゼキューションの一部を現場に割り振って、一緒にいろいろとやっているという構成にしています。
田中:これまで友澤さんのポジション(CMO)の方はいなかったんですか?
友澤:いないです。東京海上グループの中にはCMOはいないですね。
田中:旧来は何部だったんですか?
友澤:マーケティング部です。
田中:今は?
友澤:CX推進部って呼んでいます。
田中:そこはCXが入っているんですね。
友澤:だから部署の垣根を超えて、WEBやアライアンス、代理店を含めてCX部に。全員で40人ぐらいいます。
田中:では、40人の教育はどうしているんですか?
友澤:やりますよ!
田中:(友澤さんなら)やるでしょ(笑)
友澤:専門人材と言われている人が数人いて、わたしもマーケティングのコンテンツを作って自分が講師になってやりますけど、マーケティングとかLINEの使い方とかよりも、企画の立て方とか……。最近やったのは、何だったかな……ダークサイドスキルについて(笑)。
田中:(笑)。それは今度たっぷり時間をもらってもいいですか?
友澤:(笑)。論理的思考力とかじゃなくて、「リーダーはどこに覚悟を決めるのか!」とか、そういうことをメンバーに話をしたり、リーダーに話をしたり。そういうことを定期的にやっています。そこに社外の人も呼んで話をしてもらうっていうことをしています。
田中:評価はしないけど成長を助けることや教育含め、ミッションとして課せられているわけではないけど、やらないといけない。こういう新しい取り組みをするからということですよね。
友澤:そうです。自分がいなくても動く組織じゃないといけないので。
田中:そうですよね、CMOってそういう役割ですよね。そういうところで言うと、ちょっと意地悪な言い方をすると、DX(デジタルによる変革)されたCXは他社も真似しそうじゃないですか? 他社さんもテクノロジーは使っていて、事故が起こったときにどれだけのことをやってくれるかを訴求したり、そこに人が寄り添ってくれるというイメージを出しているじゃないですか。手前のところの「事故を起こさない」、ここにイーデザイン損保さんが覚悟を持てたことに、俯瞰で見てどう思いましたか? 他社と比べて、イーデザイン損保はどういうユニークネスがあるんでしょうか?
友澤:テクノロジーの使いどころとか、それをユーザー体験にまで持っていく。事故対応にDXした要素をこだわって作っていくとか……。表層的な話をするとその辺がユニークネスではあるんですけど、本質的に、この会社が本気だなと感じるところ、将来的には本当の意味での競争優位性になるだろうなと思うところは、めちゃくちゃ“顧客中心”なんですよ。
メディアの皆さんにも記事を書いてもらっていますが、「これってお客さんの目線で見たらどうなのかな?」とか、ずっとその話ばかりしているんです。それが、本当の意味での強さ。それから、短期的に数字につなげるのは大変なんですけど、数年経てば花開くかなぁと上の人たちはそういう目線で見ているのが強いし、我々がこだわっている所がCXなんですよね。
「&eがある世界とない世界」をユーザーが自分の言葉で語ってくれたら成功
田中:ここ2年ぐらいはパンデミックなどで価値観が変わってきたなと思うんですが、よりカスタマーファーストになったなど変化はありますか? 友澤さんは「ユーザーファースト」とずっと言っているから、僕の中では「友澤さん=ユーザーファースト」で違和感はないんですが。カスタマーファーストでやっている会社としてこの2年ぐらい、心境の変化は? 経営者も含めてですけど。
友澤:イーデザイン損保もグループ全体としても、情報爆発している時代に、同じコミュニケーションをしてもなかなか難しい。だからこそナラティブが大事だと思うんですけど、その辺をめちゃくちゃ加速させたのがこのパンデミック。より不確実性が高くなったんですよね。そこへの対処の切り口としてユーザーファーストであったり、ナラティブであったりは大事になってきてはいますよね。
田中:SDG’sやカーボンニュートラル、地球環境問題とか、「&e」は社会課題に寄り添っているようにも見えます。それは、カスタマーファーストとして、顧客がいる社会に向き合っているからだと自信を持って言えるんでしょうね。
友澤:それはそうだと思います。でも、それ(事故のない社会)をちゃんと言うってことと、やり切るっていうことが大事なんだと思います。この“やり切る”っていうのも、本当の意味でパーパスをやり切れるかっていうのがキモで、そこをイーデザイン損保はこだわりまくっているんじゃないかと思いますけどね。
これから、似たような商品や施策や機能が絶対に出てくるとは思ってはいるんですけど、だけど本質的な部分はわかってくれるだろうし、わかってくれるようなコミュニケーションを我々マーケッターがどうするかが、より問われていると思っています。
田中:データを蓄積する、データドリブンでパーパスを実現するために、カスタマーファーストで社会としっかり接続したような商品やブランドを作って、そのデータをいただいて、それを還元して、そのデータをビジネスやマーケティングに生かしていくっていうのは、先行して始めた方が良さそうですよね。
友澤:もちろん。だからこそ、従来商品と「&e」を併存させずに一律に持っていった方がいいとか、ユーザーが迷わないようにするためには「&e」一本化にするとかも考えています。結果論として、そうすればデータも溜まるし、データドリブンにもなっていく。
でも、データドリブンのために「&e」なんだって言うと、それはそれで違うんですよね。
わたしはそういう思考で(マーケターとして)20年ぐらい働いてきていました。CPA(顧客獲得単価)お化けだし、ROI(投資収益率)を大事にするっていうことをずっとやってきましたが、至った結論は、この思考をすると「縮小均衡化」するってことなんですよね。数字って見えれば見えるほど、直したくなるんです。数字を微妙に上げたくなる。でも見えていないものが半分ぐらいあって、そこに対しては思考しなくなってしまうということにも気づきました。だからもう一度、パーパスを考えてから数字をみないといけなくなってきたかな、と。
マーケターとして普通に考えたらTVCMをやったのでいくらのリターンがあるの? とか考えますし、ROIはどうなんだ? とメディアカンパニーは問われることが多いと思います。でも、わたしはこの「&e」の施策に関しては「問わない」と言っています。その代わり、どれだけ「やり切るの?」というところは追求しますね。
田中:メディアカンパニーは「そうですね!」ってなると思うんですが、代理店のプロトコルを変えるのって大変なんじゃないかなって。代理店出身の僕が言うのもなんですが(笑)。大変でしょう?
友澤:大変です(笑)。一方で「数字を追わないこと」と「数字を言わないこと」は違うじゃないですか。見立てた数字に行かないっていうのは別にいいんですよ。でも「やり切っているの?」っていうことは、常に問い続けています。結果、数字がいくか、いかないかは問わないんですよね。それを共有したうえで、どこまで本気で向き合ってくれるかをメディアカンパニーには求めています。
実は、ここ6ヵ月の間に複数のメディアさんとお付き合いしているんです。でもメディアジーンだけなんですよ、取り組みが続いているのは。一番初めに「共創しようね」と、こういう取り組みもある、ああいう取り組みもあるといろんなことをやってくれているし、実際に結果も出ている。その部分だけは相当こだわっていますね。
田中:正直、友澤さんから最初に「&e」のパンフレットをもらったとき「これ儲かるのかな?」と思いました。かつ、ブランディングっていう名目とか販促とかではなくて、ブランドづくりとかでやっているとなったら、(CPAお化けの異名を取る)友澤さんらしくないなって思ったんです。この「&e」がある世界とない世界でユーザーにとってどういう違いがあるのか。一方でイーデザイン損保さんにとってどういう違いがあるのかは、言語化されつつあるのじゃないですか? これからですか?
友澤:これからですね。もやっとしているものはあるんですけど。むしろ、代理店とかメディアはパートナーなので、何を共創しますか? といったときに、先ほど田中さんがいった「&eがある世界とない世界でユーザーにとってどういう違いがあるのか」を一緒に言語化できて、それがユーザーに伝わって、ユーザーが自分たちの言葉で自然に語るっていうのが、本来の成功した状態だと思うんです。それを、ぜひ作りたい。
でも、数字ではめた瞬間に多分ね、うまく行かなくなる。そうならないようにするために、「どういうステップを描きますか?」というのは、むしろ一緒に考えさせてもらえるとありがたいですね。
田中:免許を持っている人、クルマを持っている人、自動車保険を自分で契約したことがある人を(会場の人に)聞きましたけど、運転したこともなければ、保険の契約もしたことがない人もいるじゃないですか? そうすると、助手席に乗っている人や後ろに乗っている人たちの安心を支えているのが「&e」というサービスと知った瞬間に、『この人をパートナーに選んでよかった』というシーンを想像してみるとか……。
今までダイレクト(保険)は特に、契約者と保険会社の2者間契約。そこに家族とか友人とか社会とか家とかの事情があって、そこまでサポートしていくような流れになると、そこにパーパスが刻み込まれていく。「ちょっとあれ、いいよね」っていうナラティブが生まれる玄関をどうやって作っていくか。これから(イーデザイン損保さんと)一緒にやれたらいいなと思いますね。
友澤:今現在、ご契約いただいている方からそういうエピソードが1つあって。旦那さんだったり奥さんだったり、パートナーが運転するシーンがあるじゃないですか? 相手が運転しているときほど「運転が荒いな」って思うらしいんですよ。
田中:イライラするんですよね(笑)。
友澤:自分が運転しているときは「自分の方が運転は上手い」と思うっていうのは、必ず出てくるエピソードなんです。「あなた、運転荒いわ」「お前の運転ダメだな」っていう感想だと何も伝わらないんですが、それを「見える化」すると安全の意識に変わっていって、結果的に安全運転になるというエピソードは、今ご契約いただいた人の中から少しずつ出て来ています。
そういうことも含めて、「事故のない世界を作っていく」ってことなのかなと思うので、それをどうやってメディアに載せて、エピソードに載せていくかっていうのは、SNSでも何でもいいんですけど、どういう風にお客様に伝えていくかは、これから我々がやらないといけない、かなり大きな課題なんです。
“ナラティブ”とか“トライブ”という言葉は耳に残るんですけど、具体でどうするのかというのは世の中的に意外とできていない。どこかのパートナーさんと、ちゃんと創りきりたいなと思っています。
「事故のない世界づくり」のために、本当の“パートナーシップ”を築いていく
友澤:実は、この4月から「もしかもマップ」というのを始めています。「魔の7歳」といわれるぐらい、小学校1年生ぐらいの身長ってドライバーの死角になりやすく事故率が高いんですよね。そこで、どの場所が危険なのかを自治体と連携して、MAP上で「見える化」、DX化しようとしています。
Youtube: https://youtu.be/agQEzhLBowY
「もしかもMAP」はスタートして5万ピンぐらい立っています。「&e」のユーザーの方が立ててくれたピンの数も多いのですが、約90もの自治体にも協力いただいています。
「事故に遭わないための世界づくり」っていうのは、やれば動くんですけど、そこにROIとかビジネス目標を立てた瞬間に物事が進まない。だから、本当の意味でのパーパスに向き合っています。1年後ぐらいにわたしが(イーデザイン損保から)いなくなっていたら、「ロマンとソロバンだと、ソロバンの方が勝っちゃうんだね」と思われるでしょうし、わたしがまた来年、再来年もいれば、そういうの(パーパスをビジネスにすること)って上手く進むんだねと思って見ていただけるとありがたいです。
田中:今回のセッションでわかったことは、友澤さんとイーデザイン損保は、保険を作っているわけではないということ。未来のトランスフォーメーションとかこの先のビジネスモデルを考えたときには、保険会社でなくなっているかもしれないですよね。
友澤:そうですね。我々の取り組みを皆さんにぜひ、注目していただきたいです。実際にこういうサービスを使っていただいて、(周りの人に)すすめていただければ。皆さんには当事者となってもらい、本当の意味での“パートナーシップ”として一緒にやれるといいなぁと思っています。