【海外事例】お手本にしたい、良い企業コミュニティの作り方
ブランドにとって、コミュニティは好意を高めたりポジティブな感情を長い間保ち続けるためのひとつの手段です。ですが、そのコミュニティに参加したくなる雰囲気に巻き込んだり、活発に交流する仕組みを整備し続けていったりと、それらの活動を長年に渡って行うのは至難の技でしょう。ファンの心理を的確にとらえながら適切にデジタルマーケティング施策を展開していく――今回はそんな工夫にあふれた企業のコミュニティについて海外の事例をご紹介します。
業界全体の利益となるコミュニティを展開し自らハブとなる:Waves Audio
「Waves Audio」はイスラエルでスタートし現在はアメリカだけでなくインドや台湾にも進出しているプロ向けオーディオソフトウェアの会社です。主な顧客は音楽制作を行っている人々ですが、その製品は、初心者からグラミー賞受賞音楽プロデューサーにまで使われています。
Waves Audioは公式サイト上にもフォーラムを立ち上げていますが、それだけにとどまらずFacebookグループ「Waves Audiophiles」を熱心に運営していることに特徴があります。このコミュニティーでは、Wavesの商品に対する使い方についてユーザー同士がコメントをしたりアドバイスをしあっています。しかしWaves Audioは、自社商品に留まらず、他社商品も含めたオーディオソフト全般について自由に議論・発言することも推奨しています。Facebookの「管理者からのグループルール」では、議論を活発化するためにもコミュニティのメンバーがお互いを尊重するよう促しています。
また、Waves Audioはエントリーレベルから最高級レベルの商品までを取り扱っており、プロだけでなく初心者からのコメントやフィードも積極的に受け付けています。多様なレベルの人たちが楽しめ、知りたい情報を得られる場として立ち上げることで、自由で開かれていて、親しみやすい場所になることを狙っているようです。
このFacebookコミュニティには現在6万人近い数のメンバーがおり、専門商品の分野にしてはかなり大人数のコミュニティと言えるでしょう。また伸び率も高く2020年に4万人だったことを考えると、まだまだ成長していく余地がありそうです。
オンラインもオフラインも活用して絆をつくる:Frugi
「Frugi」はオーガニックコットンを使ったキッズ用のファッションブランドで、イギリスを拠点とし通販を中心にビジネスを展開しています。この企業が運営しているFrugi FamilyというFacebookのグループでは、親たちが日々の育児の楽しいこと、辛いこと、遊びのアドバイス、家族写真などをシェアしており家族のように暖かい雰囲気が特徴です。
また、Facebookグループメンバー限定のプレゼント、ライブビデオ、そしてメンバーに限り新作商品が先に公開されたり、Frugiがメンバーに商品のフィードバックを求める機会もあったりと、双方向なコミュニケーションが成立しており、ファンクラブとしてうまく成立しています。
さらに驚くべき活動として、Frugi Familyはメンバーの住んでいる地域でのオフラインイベントも開催しているそう。メンバーは2万人近くおり、この濃く活発なコミュニティは、コミュニティマーケティングのお手本として多くのマーケッターに注目されています。
ハッシュタグで複数のプラットフォームを横断してコミュニティが成長:Passion Planner
Instagram: https://www.instagram.com/p/CUaxwCrpFXx/?utm_source=ig_web_copy_linkg
「Passion Planner」は、スケジュール帳を販売しているアメリカの会社です。ユーザーは無料のコミュニティプラットフォーム(Facebook、Instagram、Twitterなど)を使用し、「#PashFam」を介してコミュニティーを形成しています。
ブランド側の施策はいたってシンプル。「#PashFam メンバーとして、伝えたいストーリーがありますか?私たちのブログに記事を投稿して、あなたの知恵を私たちと共有しましょう」といったメッセージで、公式サイトや各プラットフォームに定期的かつ積極的にお題を投稿すること。Passion Plannerの潜在顧客が欲していると思われる「刺激的なストーリー、無料ダウンロード、限定販売、理想的な生活を築くためのヒント」を提供して、コミュニティへの参加を促しています。
具体的には、手帳に似合う文房具の紹介や、有用なレイアウト方法やダウンロードコンテンツの紹介、時には「3週間感謝の気持ちを意識して人生を変えるチャレンジ」などと手帳をうまく使いながらライフスタイルに変化を与えるコンテンツが展開されています。
これにより利用者が各プラットフォームで「自分流を紹介」することがモチベートされ、コミュニティの活発化につながっています。またこのハッシュタグを使ったSNSでのRTやフォローでのプレゼント企画なども実施されています。
コミュニティの軸である「自分の手帳がどんなに有用で楽しいか」というアピールは、Instagramとの相性が抜群で、Instagramでは、#PashFamが138,000回以上使用されているほど。ですがハッシュタグひとつで、プラットフォームに縛られることなくコミュニティが形成できるのは、ひとつの理想形ではないでしょうか。
熱量が、コミュニティ運営の求心力を生み出していく
最後にひとつ、ご紹介したいのは「The Money Mustache Community」。これは、30代で仕事を早期退職して話題となっているFIREエコノミーの第一人者ピーター・アデニー(通称Mr.Money Mustache)氏の個人発のコミュニティです。
ブログで登場した「Mr.Money Mustache」というキャラクターを通じて、活動をしていくうちに彼の周りにはファンが生まれそこにコミュニティができるようになりました。
今やその規模は、個人として異例の4万人ほど。「FIRE」というセンセーショナルなキャッチコピーの威力はあれど、その秘訣はやはり「自身が実現した早期退職の仕組みや実践におけるアドバイスを惜しみなく与える」という熱量にあるのではないでしょうか。今では彼の考え方に賛同したメンバーがシェアオフィスを運営するようになったり、コミュニティでも投稿者同士の議論が活発に交わされ続けていたりと熱量は多くの人に伝播し続けているようです。
日本ではSNSプロモーションが思わぬところで炎上してしまったりり、会員制サイトを作っても人が集まらないと悩むことも多く、コミュニティ運営はハードルが高く思えるかもしれません。ですがThe Money Mustache Communityは、そこに熱量のある運営者とメッセージがあれば乗り越えていけるという示唆ではないでしょうか。インフォバーンでは、そんなコミュニティ施策を成功に導くプランニングとメッセージ&コンテンツ作りを得意としています。コミュニティ運営にお悩みの方は、ぜひご相談ください。
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