オウンドメディアをより成長させる、アーンドメディアの使い方
オウンドメディア運営を続けているだけでは、なかなかトラフィックが増えなかったり、SNSとどのように組み合わせれば効果的なのかということに悩まれたりする方も多いことでしょう。本記事では、マーケティングや広報にも役立つオウンドメディアとアーンドメディアの連携について解説いたします。PR会社を経て株式会社インフォバーンでコンテンツディレクターとして働く鈴木椋介が、自身の経験に基づきご説明します。
基本のPESOモデルから、メディアの特徴を学ぶ
マーケティングや広報を目的としたオウンドメディアを設計するとき、インフォバーンでは、必ずオウンドメディア以外のメディアの存在やその連携も同時に検討します。
設計のプロセスで可視化されたカスタマージャーニーに基づくと、ユーザーがオウンドメディアに、いつ何を期待してどこから来訪するのかということがコンテンツ制作にも非常に重要になってくるからです。
その検討のためにも、アメリカの著名なPRパーソンであるジニ・ディートリッヒ氏が2014年に提唱した「PESOモデル」をまずご紹介します。
PESOとは、オウンドメディア(Owned Media)、アーンドメディア(Earned Media)、ペイドメディア(Paid Media)、シェアードメディア(Shared Media)の4つのメディアの頭文字をとって命名されたメディア戦略モデルのことです。
この4つのメディアについて詳しく見ていきましょう。
1)アーンドメディア(Earned Media)=インフルエンサーやマスメディアなど
インフルエンサーや、マスメディアなどのなどの第三者が情報発信することやそのメディアを指します。これらを対象にした活動がPRです。PRはパブリック・リレーションズの略で、自社をとりまくステークホルダーと長期的な関係性の構築をめざす活動です。その一手段であるパブリシティ(パブリシティ報道とも呼ばれる)は、企業が自社の情報をマスメディアに自主的に提供し、メディアを通じて報道してもらうことを狙います。この場合、広告費としての支払いはありません。アーンドメディアでは、伝えたいメッセージを完全にはコントロールできませんが、メディアの記者や編集者などの第三者の視点が加わっているため、客観性があることが特徴です。
2)ペイドメディア(Paid Media)=広告
テレビCM、インターネットのバナー広告枠やWebメディアの記事広告など、費用を支払って情報を拡散するメディアです。企業が伝えたいメッセージを重視して伝えることができる特徴があります。
3)シェアードメディア(Shared Media)=SNS・ブログなど
生活者が主体的に行うもので、SNSやブログでの投稿のことです。拡散やコメントが活発に行われることが特徴です。このメディアは、企業のコントロールが効きませんので、評判形成・認知獲得の味方とできる一方で、ブランドや信頼感を毀損させるリスクともなりえます。
4)オウンドメディア(Owned Media)=自社メディア、自社SNS、メールマガジンなど
自社が所有するメディアのことを指します。自社が運営する公式サイトやWebメディア、SNSアカウントであれば、発信する内容を自由にコントロールすることが可能です。発信する情報は主観的なものになりますが、できるだけユーザーやオーディエンスのニーズをとらえたり、ライフスタイルによりそったりすることで自社にとってよい効果をもたらすことができるでしょう。
このPESOモデルが有名になった背景には、マーケティングや広報活動においてメディアの連動を考えたほうが、目的を達成しやすくなり効果がより高まると考えられたからでしょう。
次の章では、オウンドメディアを起点として、コンテンツ面でアーンドメディアとどのように連動すればよいかを解説します。
メディアを横断した連携を実現するために必要な「メディアフック」とは?
前の章でお伝えした通りオウンドメディア運営を軸に考えると、自社のコントロール配下で自由にメッセージを伝えていけば、ブランディングに寄与できることでしょう。しかし既にファンになっている人や興味関心のある人だけにしか伝わらない可能性が高く、ユーザーやオーディエンスが限られてしまうという弱みもあります。それを手助けし拡散に寄与できるのがペイドメディア・アーンドメディア・シェアードメディアである、と考えると良いでしょう。
ペイドメディアは広告費を支払うため、意図しているメッセージをコントロールしやすくなりますが、アーンドメディアでは、第三者であるメディアに動いてもらわなくてはならない点が異なります。
そこでアーンドメディアとの連携で必要になるのが「メディアフック」とも呼ばれるものです。メディアフックとは、パブリシティなどにおいてマスメディアがニュースとして取り上げたくなるような情報価値のことで、 メディア側においては「ニュースバリュー」とも呼ばれます。
ですが、各媒体によってはそのニュースバリューの考え方が異なり、興味をひかれる部分に違いがあることも考慮しなくてはなりません。業界紙であれば売上金額の数値的上昇や製品開発の背景などがメディアフックになります。ビジネス誌の編集者は商品を売るための仕掛けに興味を持ってくれるかもしれません。工場に潜入するテレビ番組のディレクターは、工場でどんな画が撮影できるかに興味があるでしょう。
オウンドメディアのコンテンツを企画するときに、アーンドメディアとの連携を想定しているならば、ユーザーやオーディエンスのニーズに応えるだけではなく、マスメディアでの露出の獲得を意識してメディアフックを盛り込みリリースと連携すると良いでしょう。
では、ユーザーやマスメディアが注目したくなるようなメディアフックをどのように考えればよいのでしょうか? 上岡正明氏の著書『共感PR 心をくすぐり世の中を動かす最強法則』(朝日新聞出版)では共感される情報に落とし込むために「8×3の法則」が紹介されています。
まず、企業側の商品やサービスの強みが、下記8つの性質のうちどれに該当するかを明確にしていきます。
- 新規性
- 優位性
- 意外性
- 人間性
- 社会性
- 貢献的意義
- 季節性
- 地域性
次に、その該当した性質を、下記3つの視点
- 社会
- 人(ターゲット)
- メディア
で客観視して確認を行うことで、企業の情報を共感される情報に落とし込んでいくことができる(※上岡正明氏の著書『共感PR 心をくすぐり世の中を動かす最強法則』(朝日新聞出版)より要約)とのこと。このような考え方を参考にメディアフックを検討していきましょう。
メディアフックはさまざまなパターンが考えられますし、多様なメディアの記者や編集者に興味を持ってもらうためには、媒体の方向性に合わせていくつか検討していくことも必要です。
最後に、これらのメディアフックの信憑性を支えるためにも、専門家の視点を活用することもおすすめします。例えばフルーツの健康効果を訴求するコンテンツを制作するときには、医師や管理栄養士などの専門家の監修を取り入れます。記事内やプレリリースで登場した専門家を、記者発表会や個別に取材してもらえるよう手配すれば、メディア掲載の可能性をさらに高めることも可能になります。
4つのメディアの連携が必要
今回ご説明したオウンドメディアとアーンドメディアの連携以外にも、残りのペイドメディアやシェアードメディアとも連携を実践するには、全体的なコミュニケーション設計が必要となります。
インフォバーンではオウンドメディアのコンテンツ作りを強みにしながらも、その力を最大化するためのコミュニケーション設計も同様に重視しています。これからオウンドメディアを構築しようと思っている方も、今運営しているオウンドメディアの見直しを行いたい方もぜひご相談ください。