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アナログ/デジタルが併存する時代に、デジタルマーケティングはどこへ向かうか?【TOKYO FM「AUGER Kiss our humanity」出演レポート】

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2023年2月4日に放送された、グレートワークス取締役COO/貝印執行役員である鈴木曜さんがパーソナリティーを務めるTOKYO FMのラジオ番組「AUGER Kiss our humanity 心に触れて“整える”時間」に、インフォバーン代表取締役社長・田中準也が出演いたしました。その模様をお届けします。

なお、本放送は音声コンテンツ・サービス「Audee」でもアーカイブ視聴可能で、概要をまとめた記事も掲載されています。下記よりご視聴・ご覧ください。

視聴はこちら:「Audee」内の音声コンテンツページ
記事はこちら:「Audee」内の記事コンテンツページ

デジタルが最先端ではなく、当たり前の世代の出現

田中準也が代表を務めるインフォバーンは、マーケティング・コミュニケーション支援/デザイン支援を行う会社で、今年で25周年になります。2021年から「対話を生み、価値を創る」というタグラインを掲げて、長年培った編集力を武器に「クライアント以上にクライアントのことを理解する」支援会社を目指しています。

「インフォバーンには、かっこいいデジタル・メディアの代表というイメージがあって、その代表であるジュンカムさん(田中の愛称)に親しくしていただけて光栄です」(鈴木曜さん

現会長の小林弘人と、現メディアジーン(インフォバーン関連企業で、多くのオンラインメディアを運営する会社)CEOの今田素子が創業したインフォバーンでは、2021年から田中が代表取締役社長に就任し、組織を率いています。2年近く経ち、経営者としての実感も増してきたそうです。

「僕は『経営者』という立場は似つかわしくない人間だと思ってきたんですが、もともと人と会話するのは好きなんですよね。だから、いろんな人と話さないといけない経営者という立場は、実は合っているのかなと今は思います」(田中準也)

マーケティングの中でも、「デジタルマーケティング」を中心に支援事業を行っているインフォバーン。鈴木曜さんから「デジタル化が加速するなかで、変化への肌感はどうですか?」という質問が出て、デジタル環境の話になりました。

「僕は今、大学で三年生に向けた授業をしているので、若い世代の『デジタル』に対する感覚がまるで違ってきていますね。かなり単純に言えば、『インスタ(Instagram)とスタバ(スターバックス)が神』という感じですね。
何かマーケティングに関する課題を出したり、感想を書かせたりするときに、必ずどちらかのことについて書いてくる学生がいます。逆に、僕らの世代(40~50代)がよく使っているfacebookとかは全然見ていない。
メディアに関しても、『昔のマスメディアはこうでした、YouTubeはこうですよね』と比較して解説しようとしても、ポカーンとしている。もはや『お茶の間』という感覚がわからないんですよね。

僕らの世代ではよく、『デジタル時代に対応した企業の進化が求められています』なんてことを言いますけど、彼らにとってはデジタルはごく当たり前にあるもので、特別に尖っているものという認識はない。僕らにとっては懐かしい『パケット』だとか、『iモード』といったものも、言葉自体から知らない世代ですからね(笑)」(田中準也)

「デジタルについては、僕は切り替わりの世代でしたが、いまは当たり前の世代。こうして話しているラジオも、以前は『トラディショナル・メディア』なんて言われ方もされていましたけど、いまでもラジオはよく聴かれていて、アナログとデジタルの併存がコンプリートした感じがしますよね。どっちのメディが云々ではなく、バランスが良くなったイメージあります」(鈴木曜さん)

デジタル・コンテンツについては、「今のYouTubeに投稿されているコンテンツについては、やっていること自体は昔のラジオやテレビのフォーマットに似ていますよね」「媒体が変わっただけで、コンテンツの根幹は変化していないかもしれない」と田中。
そのうえで、「今のデジタルが当たり前の世代が、その原体験を基にしてこれからつくる番組については、これまでとまるで違うものが出てくるかもしれないですね。すでにTikTokなどを見ても、その兆候を感じます」と、感想を述べました。

「オタクの匂い」がする二人は意気投合

鈴木曜さんと田中準也の初めての出会いは、沖縄でのカンファレンスの場。

「曜くんがとても寂しそうに、バスの中で一人ぼっちでいたから話しかけて……。『ONE PIECE』の悪魔の実の話とかしていましたね(笑)」(田中準也)

そこで「オタク」的な匂いを互いに感じ合った二人は意気投合し、以来十数年来の付き合いになるそうです。

そんな二人の共通の話題として最大の存在は、「ガンダム」です。「ガンダムには人生におけるすべてが詰まっている」「素敵な言葉を生み出す名言製造機だ」と言って憚らない鈴木さん。
田中は、あらゆることをガンダムのアナロジーで語ることを特技にしていて、昨年3月には共著で『ガンダムでわかる現代ビジネス』という書籍も刊行しています。

「もともとサンライズ作品、富野由悠季さんの作品が好きで、特にファースト・ガンダム以来、40数年続く『ガンダム』というコンテンツには、並々ならぬ愛着があるんですよ。

それでマーケターの音部大輔さんと、サンライズさん非公認で『ガンダムの名台詞』を基に戦略とマーケティングを語るセッションを行ったら、それを聴いていたこれまたマーケターの豊後祐紀さんから、『サンライズさんを紹介しますよ』と言われまして。
それを縁にサンライズの方とも親しくさせていただくなかで、『ガンダムとビジネスを近づけたい』と、『Gundam Meets Business』というユニットをつくって、『GUNDAM. INFO』という公式のポータルサイトで連載を始めたんです」(田中準也)

その後、その連載は3人の共著として、たびたび開かれたセッションの内容も追記しながら、出版社のSBクリエイティブから書籍化されました。その表紙(※カバーを外した状態の表)には、「カバー案としては没になった」という田中が描いた「グフ・カスタム」のイラストが掲載されています。

ビジュアルとして誰もが知る「ガンダム」のモビルスーツではなく、「グフ・カスタム」を表紙にしようとする……ガンダムのキャラクターを使ったパッケージデザインの仕事をした際に、近いことを鈴木さんもされたそうです。二人が互いに、オタク的な親近感を抱くのもそうした感性の近さからかもしれません。

『ガンダム』とともに、水島真司の野球漫画『ドカベン』を愛読しているという鈴木さん。「ジュンカムさんと仕事をするなら、『ドカベン』ですかね」と鈴木さんが言うと、「でも、明訓高校(主人公・山田太郎の高校)よりも、敵の高校のほうが好きなんでしょう?」「『ガンダム』も『ドカベン』も、ライバルの存在が魅力なんですよね」「犬飼小次郎(山田太郎が一年次の高知県代表・土佐高校のエース)と土井垣将(同じく一年次の明訓高校の主将)が、ともに監督になって再び対戦するとか、胸アツですよね」と、お二人のオタク・トークは盛り上がります。

デジタルの世界でも活きるアナログ的なスピリット

「心を整える」をコンセプトにした同ラジオ。田中が選んだ「整いソング(心を整えるための曲)」は、『モニカ』(歌:吉川晃司)。「『整いソング』としてすぐに頭に浮かんだのがこの曲でした」「車の中で再生した曲No.1なんです」と言います。頑張りたいときには車の中で、『モニカ』や『SAY YES』(歌:CHAGE&ASKA)を流しながら歌っているそうです。

車の中では、いろんなことを考えながら、頭を整理していくことができるようで、ハンドルを握って、車を走らせながら「整う」ことが多いと言います。

普段から「人を見たら師と思え:我以外皆我師」を座右の銘にしていて、人と楽しい会話をしたり、尊敬している人と対談したりしたあとに、電車や車で移動するなかで振り返って、そこで得た話を自分事化することで、自然と「自分に向き合う時間」になるそうです。

「僕の場合、心を整えるために、他人の力を借りているんですね」(田中準也)

続いて鈴木さんから、「デジタルマーケティングの世界で旬な話題はなんでしょうか?」という質問が出ました。

「デジタルマーケティングの定義として、僕はWebマーケティングとか、Webコミュニケーションというように「Web」起点でとらえるのではなく、マーケティングのデジタル化、デジタルが当たり前になった時代のマーケティングというように、「マーケティング」を主軸に考えているんです。
だから、デジタルマーケティングの変化としては、データが取りやすくなって、仮説検証ができるようになり、マーケティングの選択肢が増えたこと。そのうえで、マーケティングを成功させる確率も上げられるようになったこと。そこが重要だと思います。
つまり、ビジネスの精度を上げていくことが、いまのデジタルマーケティングには求められていることなので、ますますデータをしっかり見ないといけない。

その一方で、データに関して『個人情報保護』を強化するグローバルな波がやって来ているので、企業が消費者や生活者、顧客と向き合うときに、価値あるものを提供できないといけません。企業が提供できるベネフィットを考え直さずに、ただ「データをください」では通用しなくなっていくでしょうね。データの扱いがキーになります。
デジタルを含めたマーケティング全体としては、企業にパーパスやリーダーシップがどんどん求められてきていますよね。従業員を含めたステークホルダーをどうエンパワーメントしていくか。いわば、右脳と左脳の話の両輪がマーケティングに求められているのが、今かなと思います」(田中準也)

これに関連して今、改めて注目度が高まるAIの話題に。
「AIに負けない人間のクリエイティブは残ると思います」と言う田中に対し、「アナログもデジタルも表裏一体というか、デジタルの領域でどんどんクリエイティビティが求められるようになると、今度はアナログの大切さも出てくるんじゃないかなと思います。とにかく面白いものをつくっていきたいですね」と鈴木さん。

「鈴木さんは世代としてデジタル・ネイティブではないけど、デジタルもお好きでしょう。『アナログ人間だけど、デジタルが好き』ここが大事なんですよね。アナログでできたことをデジタルでやるフェーズはもう過ぎていて、このデジタル環境の中で、アナログ的なスピリットを持って、どういうエンターテインメントをできるかというところに来ていると思います。結局は魂ですよね」(田中準也)

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最後に、「ジュンカムさんが挑戦したいことは?」という問いに、「55歳になって、創作意欲が湧いてきました」と語る田中。

著書に『マーケターのように生きろ』(東洋経済新報社)があるマーケターの井上大輔さんと雑談しているときに、「ジュンカムさんは本当にコネクター気質の方ですよね。これからの時代には、重要な存在だと思いますよ。本とか出したらどうですか?」と言われたそうで、それを受けて、人と人をつなげることを信条としてきた田中としても、「コネクターというものを概念として言語化して、何かコンテンツをつくれたらいいな」と思ったそうです。

「その際には、何かお手伝いさせてください」と鈴木さんがおっしゃり、ラジオ放送を終えました。

この二人は後日、2月9日に開催されたイベント「BACKSTAGE」に登壇し、川崎フロンターレ・プロモーション部部長の天野春果とともに鼎談を行いました。その模様はこちらに記事として掲載しています。

ENVISION編集部

変化の兆しをとらえ可視化することをテーマに、インフォバーンの過去から現在までの道のり、そして展望についてメンバーの動向を交えてお伝えしていくブログ「ENVISION」。みなさまにソーシャル・イノベーションへの足がかりとなる新たな視点をお届けしてまいります。