【海外事例】社会課題をテーマにしたSNSコミュニケーションの成功事例3つ
ソーシャルメディアの活用は、PR戦略の重要事項といわれます。商品やサービスを直接訴求するだけではなく、どのように顧客・消費者と関係性を構築していくのか。近年注目が高まる社会課題をテーマにSNSでコミュニケーションを取ることに成功している企業やブランドの事例を3つご紹介いたします。
SNSを積極活用し、真のペット・コミュニティを形成 | Trupanion
「Trupanion」は、米・シアトルに本社を置き各国でビジネスを展開しているグローバルな保険会社で、保険商品はペットに特化しています。従来のペット保険によくある煩雑な書類による保険金の事後請求という方式ではなく、費用の大部分を医療機関からTrupanionへ直接請求できる仕組みを取り入れ、飼い主の負担を減らすようなビジネスモデルで成長を続けている企業です。
Webサイトでは保険商品の特徴を深く知ることができたり、料金をユーザーが確認できる機能はありますが、他にも下記のようなペットケアに関する情報を抱負に発信しています。
とくに「Blog」では、犬または猫のペットの健康管理や病気予防に関する専門知識やアドバイス(獣医師により確認されている信頼性の高い情報が豊富に掲載されています)を提供しています。
最近では飼い主が在宅勤務をしていたことで却って増加しつつあると言われる、ペットの分離不安症についての注意や対応ポイントを投稿したり、遺言書にペットの引き渡し先が含まれていないために保護施設に入らなくてはならなくなっている現状も訴えかけたりと、飼い主がペットに対してよりよいケアを行えるようなサポートや真摯な姿勢に好感が持てます。
さらにTrupanionはSNSでもこれらの情報を投稿しつつ、さらなるコミュニケーションとサポートも行っており、特筆すべきはNPO「We Rate Dogs」との提携のひとつとして行われている、獣医師コミュニティのサポートです。
獣医師は、ペットの健康を保つために 24 時間体制で働くため、高レベルの燃え尽き症候群、キャリア満足度の低下、ストレスや自殺衝動にさらされることがあるそうです。彼らをサポートするために#EarstoVets ソーシャル キャンペーンで意識を高めることに加えて、WeRateDogs では、獣医師が専門職内で遭遇したメンタルヘルスの問題について正直に語る現場の獣医師とのオンラインインタビューを長時間にわたって配信。Trupanion はこの運動を通じて、獣医師専門家に利益をもたらす非営利団体への助成金、奨学金、教育プログラムの支援のために寄付をおこなったり、5万株を超える株式の発行をしています。
彼らはこのリリースの中で「ソーシャルメディアでペット関連の情報を幅広く提供することによりコミュニティが生まれ、自然発生的に徐々にブランドへの信頼が高まっていく。ある意味で新しいオウンドメディアをつくるのと同じような役割を果たしている」と述べています。
最近では、Trupanionはウクライナの人々とペットを助けることを目的として、「ウクライナの足」と呼ばれる募金活動を始めました。集まった資金は、ペットフード、ペット用品や薬の購入と提供、飼い主を失ったペットのケアに使われました。このイニシアチブを通じて、動物の健康を真に気遣い、ペットオーナーをサポートするブランドとしての地位を確立しています。
ソーシャルメディアにおけるブランドボイスの使い分け | Wendy’s
赤毛の少女のキャラクターで有名なハンバーガー・チェーン「Wendy’s」のSNSといえば、上記のような競合企業へに対する皮肉なツイートと毒舌コメントを連想する方も多いでしょう。炎上にもなりかねないような際どいトピックや返しをすることで、Z世代の絶大な支持を集めており非常に注目されています。
ですが一方で、雇用の問題や男女不平等など社会的問題やCSRなどの真面目なテーマにも、ビジネスパーソンの多いSNS、LinkedInで向き合っているのです。
例えばESG戦略。温室効果ガス排出量削減目標を設定し、2030 年までに世界全体のシステム全体で排出量を 47% 削減することを目指す取り組みを紹介。
また、ときには里親養護施設への支援も投稿。実はWendy’sの創設者が自身も養子だったことから、里親養育にも積極的に関与しているとのことです。
さらには従業員が尊重される職場文化の醸成のためにLGBTQIA+コミュニティとそのイベントへの参加や賛同を表明。これらに紹介した3つの投稿例からは社会的責任を果たすための真摯な姿勢が見えてきます。
戦略的に、それぞれのSNSの特性に合わせてブランドボイス(ブランドらしい語り口調や文体)のトーンを変えていることがうかがえます。
SNS投稿に寄付を連動し大きなムーブメントへ | Disney
難病と戦う子ども達のための「Make-A-Wish」財団を支援するために、Disneyはコラボレーションを継続的に行っています。そのうちのひとつが「#ShareYourEars」キャンペーン。近年は2015年のディズニーランド60周年、2018年のミッキーマウス生誕90周年などといったタイミングでたびたび行われています。
ユーザーがキャンペーンに参加するには、ハッシュタグ「#ShareYourEars」を付けて耳を装着している写真をSNSに投稿するだけ。お気に入りのMickey Mouseの耳を付けた写真や、またはMickey Mouseのような「クリエイティブな耳」の写真などさまざまな投稿がありました。
これらの投稿がSNSでなされると、Walt Disney Parks and Resortsは1投稿に付き5ドルをMake-A-Wish財団に寄付するのです。このキャンペーンは予想以上の反響がありました。2015年のキャンペーンでは、177万件の写真の投稿と4億2000万のソーシャルインプレッション、リーチは330%増加、エンゲージメントは554%増加しました。 また限定の耳付きカチューシャの売上金もMake-A-Wish財団に寄付され、結果的に、予想していた100万ユーロよりもその倍となる200万ユーロが寄付されることとなりました。
これは元々、宣伝とチャリティーをミックスしたキャンペーンとして考案され、どちらかというと1回だけのチャリティーの側面が強かったそうですが。予想外の大成功を収めたことにより2018年も実施されることに。PR戦略において重要なキャンペーンの一つとなっています。
SNSの強みを活かし、社会課題を軸にユーザーと繋がる場に
今や当たり前になった企業のSNSコミュニケーション。しかしSNSはユーザーと直接繋がる事のできるメディアであるからこそ気になってしまうのが、フォロワーや「いいね」といったエンゲージメントの獲得方法。その難題をクリアするためにも、インフォバーンではユーザーが各ソーシャルメディアをどのような目的で使っているのかを把握し、ユーザーのニーズやインサイトに応えいかに日々「共感」を生み出していくかを目指すべきだと考えます。さらに今後は、ユーザーの興味関心が社会課題やサステナブル推進活動に移っていくことも予想されます。それらのテーマを軸にいかに「共感」を生み出してくか。私たちの得意とするコンテンツ運用でご支援していますので、どうぞお気軽にご相談ください。
Illustration by Getty Images