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しがらみだらけの世の中で、どうすれば自由に生きられるか?【田中元子対談Q&A】

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2023年5月8日に、株式会社グランドレベル代表の田中元子(たなか・もとこ)さんをお招きして、弊社代表取締役会長(CVO)・小林弘人との対談を実施いたしました。

オンライン配信を行った当対談イベントの最後には、ご視聴いただいた方々からたくさんの質問をお寄せいただきました。その回答の一部を、記事としてお届けします(本編はこちらから〈第1回〉〈第2回〉〈第3回〉)。

※読みやすさを考慮し、発言の内容を編集しております。

Q:コミュニティを育む「器」としての自分に悩むことはありますか?

――古民家を使った居場所づくりの仕事をしています。常識や正義に厳しい環境に育てられたせいで、相手も自分も管理しようとしてしまって、つらそうな方たちが多いなと思います。そんななかで、それぞれの正義がぶつかり合い、カオスにいろんなことが起こる日々を過ごしているのですが、自分がそれすらもありのまま受け止められる器であることの難しさを感じています。「あの言葉は器としてどうだったかな」と問う毎日です。元子さんは器として、迷ったり悩んだりすることはありますか。

田中元子(以下、田中):ご質問をありがとうございます。ほとんどないです(笑)。

小林弘人(以下、小林):(笑)。

田中:なぜかというと、私の命なり、何か権利なりを意図的に奪おうとしてるもの以外は、だいたいどうなってもいいと思っているからです。私はすごく諦めが早いかもしれません。すぐにどうなってもいいやと思えるし、そのどうなってもいいという状況も楽しいと思えます。そういう性格なんでしょう。

ただ逆に、意志にはしつこいです。自分がこうしたいとか、あれが欲しいとか、この人と仲良くなりたいとか、自由って何だろうって考え続けることも同じです。そういうことに対しては、すごくしつこいので、その割り切りがはっきりしてるところはあると思います。

ご質問に対してアドバイスすると、そういう秩序の面で人とぶつかったり、正しさって何だろうって悩むときにも、本当はその人も悪魔じゃないんだということは念頭に置いてほしいです。それが少し自分の気持ちをラクにするポイントだと思います。

Q:「オンラインサロン」はサードプレイスになりますか?

――お二人は、オンラインサロンのようなオンライン空間上のサードプレイスについて、どう考えられていますか。

田中:こうやって今も紙とペンを使っているぐらい、私はすごくオンラインの世界には疎いんですよ。小林さんはオンラインサロンもされているんですか?

小林:僕はけっこうやってきましたね。

田中:そうなんですね。小林さんのには入りたい(笑)!

小林:(笑)。でも、これはもう定説になっていることですけど、リアルで会っていると、オンラインサロンも活性化するんですよ。だから、ある種のサードプレイスにはなりえると思うんですけど、やっぱりハイブリッドであればという話なのかなとは思います。やっぱりヒューマンタッチは重要ですよね。

きっと人間の絶妙な機微というのは、携帯の周波数のように、微細な信号を出してるんですよ。それがなかなかオンラインだと拾えないけど、オンライン上でも顔は見知れるし、考えていることもわかってくるので、さらに会うことで上手くハマるケースが多いんですよね。

田中:なるほど。私はオンラインサロンは経験がないんですけど、今はお若い方でも、ご年配の方でも、社会には面白いことを考えてる人がたくさんいると感じます。既成概念にとらわれないで、本当に人にとっての豊かさについて、まっすぐに向き合う方がいます。

だから、今の希望のなさそうな社会、不安ばかりがある世の中にも、「この人は面白いな」とか、「この人とは気が合うな」と感じられる人がいるんだって知ることができる環境のひとつとして、オンラインにもすごく可能性を感じています。

小林:単純にオンラインなら、地理的な制約を超えられますからね。どこかに通わなくちゃいけないという制限は、とりあえず取っ払えるので。

田中:そうですよね。それが厳密にサードプレイスと言えるのかどうかはさておき、その機能として、リアルとは別の良さがあると思いました。

▲対談中の二人の様子

Q:不自由な組織の中では、どうすれば自由にふるまえるでしょうか?

――自治会やPTAなど、ルールや踏襲の多い既存の組織において、自由でいるにはどうすればよいでしょうか。自由でいたい人間は、そういう組織には入るべきではない? 

田中:その組織がどんな組織かによると思いますが、ある程度アクションしても絶望的だったら、別に辞めてもいいと思います。アドバイスになっていないかもしれませんが、本当にそう思います。

行き場のないお気持ちはすごくわかります。私も仕事をしているなかで、人は束になるとバカになるんだと感じることがよくあります。一方で、束になった良さもあるはずなので、その良さが生かされている組織であれば、付き合っていくメリットはあると思います。

不自由な組織のなかで何か問題意識を感じて、自分で何とかしようしても手強いようなら……。ある程度は頑張ってもいいけど、時間の無駄になるのではないでしょうか。生きていられる時間は短いですからね。

小林:僕もそう思います。どうしても変えられないようなら、もうそこはすぐに逃げたほうがいいと思います。無駄に戦うよりも、その労力を違うところで使ったほうが良いかなと。

田中:そうなんですよね。先ほどのオンラインの話にも通じるのですが、そのストレスとはまったく違う別の世界線というものは、探せばいくらでも見つかります。それなのに何か一つの組織と戦っていると、「この世界はダメだ」という狭い思考になっていっちゃうじゃないですか。

小林:なっちゃいますよね。

田中:だから、そういうふうに自分の人生をストレスフルにしすぎないように考えて、組織とは付き合っていくのが最前だと思います。

田中元子(たなか・もとこ)
株式会社グランドレベル代表取締役
1975年茨城県生まれ。2004年より建築関係のメディアづくりに従事。2010年よりワークショップ「けんちく体操」に参加。2016年「1階づくりはまちづくり」をモットーに、株式会社グランドレベルを設立。さまざまな施設や空間、まちづくりのコンサルティングやプロデュースを手がける。2018年「喫茶ランドリー」開業。2019年「JAPAN/TOKYO BENCH PROJECT」始動。主な著書に『マイパブリックとグランドレベル』(晶文社)、『建築家が建てた妻と娘のしあわせな家』(エクスナレッジ)ほか。主な受賞に「2018年度グッドデザイン特別賞 グッドフォーカス[地域社会デザイン]賞」、「2013年日本建築学会教育賞(教育貢献)」ほか。

小林弘人(こばやし・ひろと)
株式会社インフォバーン代表取締役会長(CVO)
1965年長野県生まれ。1994年に『WIRED(日本版)』を創刊し、編集長を務める。1998年より企業のデジタル・コミュニケーションを支援する会社インフォバーンを起業。「ギズモード・ジャパン」「ビジネス インサイダー ジャパン」など、紙とウェブの両分野で多くの媒体を創刊するとともに、コンテンツ・マーケティング、オウンドメディアの先駆として活動。2012年より日本におけるオープン・イノベーションの啓蒙を行い、現在は企業や自治体のDXやイノベーション推進支援を行う。2016年にはベルリンのテック・カンファレンス「Tech Open Air(TOA)」の日本公式パートナーとなり、企業内起業家をネットワークし、ベルリンの視察プログラムを企画、実施している。
著書に『AFTER GAFA 分散化する世界の未来地図』(KADOKAWA)、『メディア化する企業はなぜ強いのか?』(技術評論社)など多数。

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ENVISION編集部

変化の兆しをとらえ可視化することをテーマに、インフォバーンの過去から現在までの道のり、そして展望についてメンバーの動向を交えてお伝えしていくブログ「ENVISION」。みなさまにソーシャル・イノベーションへの足がかりとなる新たな視点をお届けしてまいります。