BtoBビジネス領域の企業が、社会と接続するためのオウンドメディア活用とは?|パナソニック コネクト株式会社様 事例
2018年にパナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社様(現:パナソニック コネクト株式会社様(以下、コネクト))のオウンドメディアとして誕生した「GEMBA(現場)」。インフォバーンではメディア立ち上げのコンセプト設計から記事制作まで広範囲にわたって運営をご支援しています。本記事では、ご担当者である同社コーポレートブランディング部の小柳佳南子様とデジタルカスタマーエクスペリエンス統括部の河村みどり様、インフォバーンのコンテンツディレクター・大里耕平に、BtoBビジネス領域におけるオウンドメディアの可能性についてインタビューを行いました。
パナソニック コネクトのパーパスを発信する「GEMBA」
――はじめに、コネクトのオウンドメディアである「GEMBA」について教えてください。
インフォバーン 大里耕平(以下、大里):プロジェクト当初から関わらせていただいている私から「GEMBA」について説明します。2018年に立ち上げたときの「GEMBA」はサプライチェーンマネジメント領域のトピックを専門に扱うWebマガジン型のオウンドメディアでした。昨年「パナソニック コネクト」として独立されたタイミングで、企業カルチャーといったコーポレートブランディングに関わる内容も扱うようになりました。現在ではサプライチェーンという事業の枠を超え、コネクトさんのパーパスを起点にしてコンテンツを発信しています。
――コネクトのお二人の「GEMBA」への関わり方について聞かせてください。
コネクト 小柳佳南子様(以下、小柳):コーポレートブランディング部では、コネクトのファンを増やすためのメディアの一つとして「GEMBA」を運営しています。事業だけでなく、コネクトのパーパスである「現場から社会を動かし、未来へつなぐ」や企業のカルチャー、社員一人ひとりの想いを世の中に広め、共感してもらうことが私たちのミッションです。
コネクト 河村みどり様(以下、河村):デジタルカスタマーエクスペリエンス統括部は、お客様の期待以上の顧客体験とビジネス創出の両立がミッションです。「GEMBA」で制作した記事を、メルマガで紹介する、営業活動のなかで活用してもらうなど、お客様とつながり続けるためにオウンドメディアを活用しています。
――お二人のミッションに対して、「GEMBA」はどんな役割を担っているとお考えですか?
小柳:数字や実績などの事実をしっかり「企業情報」として伝える企業サイトなどのメディアとは別の存在で、「GEMBA」はパナソニック コネクトや社員の価値観や姿勢、人となり、といった「企業人格」を伝える役割を担っていると考えています。
もちろん独りよがりにならないように注意は必要ですが、オウンドメディアなので、自分たちが語りたい内容を語りたい文脈・タイミングで発信していくことができ、ペイドメディアやアーンドメディアでは語り切れなかった裏側のストーリーなどにもフォーカスできるのが魅力ですね。
河村:インターナルブランディングの役割もありますよね。パーパスを実現するために、社内の人たちにも会社全体の想いや進んでいきたい方向性を示して、社員一人ひとりの理解を深めていくことも大切だと考えています。
小柳:そうですね。私たちブランディングやマーケティングの部署は、社内の人から見たときに一見何をしているか分かりにくいことが多いんです。しかし、取材して記事として発信することで、インタビューした社内の方から「こんなに分かりやすく伝えられるんですね。これちょっと使わせてもらいます」といったようなポジティブな反応をいただくことが多くなりました。ほかにも、社内情報を客観的な目線で知りたい場合に「GEMBA」を読んでいる、という声もよく聞きますね。
不確実性の高い時代には、「定性的な情報」の価値が高まる
――「GEMBA」のコンテンツを制作しているなかで得られた知見をどのように活用しているのでしょうか?
大里:取材をしていると、現在は「不確実性の高い時代」だというお話をよく伺います。状況がどんどん変わるので、定量的な目標などは細かく修正しないと機能しません。また、製品のスペックなどで他と差別化することもどんどん難しくなっています。そうなると「定量的な情報」は、指針として活用できる期間が短い。一方で、ユーザーの価値観やビジネス上の悩みのような「定性的な情報」は大きく変わらないので、耐用年数が長くなっている気がするんです。そのため、メディア活動を通じて、直接人の話を聞くことで「定性的な情報」を集める、というのがとても大切だと感じています。
その点、コネクトの皆さんには「GEMBA」というメディアを有効に使っていただけています。取材で定性的な情報を手に入れ、「だからコネクトではこれをやっていく」というスタンスを確かめる材料にする。社会との接点である現場で、模索しながら次の方向性を決めていくというのが、御社のパーパスを体現しているのかもしれませんね。
河村:たしかに、マーケティングの現場でも、これまではどんな製品サービスがあるか、どういうスペックを持つかといった情報発信が中心だったのが、最近はその背景にある「定性的な情報」が重視されるようになってきました。現在、コネクトの事業部などでユーザーの声を直接聞く「N=1ヒアリング」が増えているのも、「定性的な情報」の相対的な価値が高まっているからだと感じます。
小柳:そうですね。「GEMBA」を通じて、定量的な結果だけでなく、ビジネスがかたちになる前の共創プロセスや当社のカルチャーといった定性的な部分を発信できるようになりましたね。
弊社のようなBtoBビジネス領域の企業は、一言で商材を説明するのが難しいので、社員の思いや企業カルチャーなどをリアルにお伝えして共感していただくことが、パーパスの浸透やコネクトのファンを増やすことにつながると思います。
――GEMBAを運営しているなかで、印象的だった取材はありますか?
小柳:企業カルチャーについての対談取材です。この企画は、「現場力」の提唱者である遠藤功さんと、弊社CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)兼DEI推進担当役員の山口有希子の対談で、「企業経営におけるカルチャーの重要性」について語っていただきました。コネクトの内部で起きていることとかなり紐づく内容だったので、印象に残っていますね。
河村:遠藤さんの書籍は、私が若いころの社内研修で何度も取り上げられていて、当時は「ものづくり企業」「製造業」の立場で読んでいました。現在、事業領域やビジネス環境も変わりましたが、再び遠藤さんの論に触れて、この取材のテーマである企業カルチャーの観点もこれまで積み重ねてきた「現場力」の先にある考え方なのだなと感じましたね。コネクト以外の第三者的な視点を交えたことで、読者の方にも企業経営におけるカルチャーの重要性をよりわかりやすく表現できた記事になったと思います。
大里:この企画は、遠藤功さんの著書の主張がコネクトのカルチャー改革と同じものを目指していると気が付いたことがきっかけで提案しました。我々としても、世の中の潮流や御社の動向を踏まえて企画提案をしているので、実現できてうれしく思っています。
BtoBビジネス領域の企業にも共感や親近感が大事
――オウンドメディアの運営では、「企業として伝えたいこと」と「読者が知りたいこと」を両立させる必要がありますが、このバランスはどのように調整しているのでしょうか。
小柳:インフォバーンさんとその都度やり取りして相談しています。日々チャットや電話で密にコミュニケーションをとっていますが、遠慮せずに意見を言っていただけますね。とくに社内にいると気づかないところを第三者目線でアドバイスいただけるのはすごくありがたいなと思います。
大里:我々から企画提案するのももちろんですが、コネクトの皆さんは我々が入手できない社内情報を「これって、何か企画になりませんか?」とカジュアルに共有してくださいます。我々は編集者なので、情報を集めて編むことが仕事です。一次情報に近い状態の加工されていない情報を共有してくださることはとてもありがたいですね。
河村:加工されていない情報を共有することで、企画の方向性を最初から制限せず、より価値の高い情報発信のかたちを一緒に考えるようにしていますね。実際、私もかなり序盤から「ミーティングいれてもいいですか?」とインフォバーンさんに気軽に相談することが多いです。
――今後、御三方が取り組んでいきたいことはありますか?
小柳:コネクトとして独立したことで、「GEMBA」はSCM領域の専門メディアから企業そのものを発信していくメディアになりました。企業カルチャーなどコネクトが持っている様々な側面からつながりをつくっていきたいですね。これからは、記事だけでなく動画やイベントなど新たな伝え方も模索していき、今まで培った知見を活かして、コネクトのファンをさらに増やしていきたいです。
河村:世の中の流れとして、BtoBビジネス領域の企業にも共感や親近感が大事になってきていると感じています。冒頭でお話したインターナルブランディングという点でも、社内の人々と共感しお互いを理解しあうカルチャーを醸成することは、「GEMBA」がもつ重要な機能だと感じています。これからより一層、「これGEMBAで記事化できないかな?」と社内の人から気軽に相談されるようなメディアにしていきたいです。
大里:あらためて、「GEMBA」を担当するなかで、カルチャーとビジネスを本気で改革しようと挑戦されているコネクトさんの取り組みに伴走できることは役得でしかないと感じています。「GEMBA」という場を活かし、ビジネスがもっと軽やかになり、企業カルチャーに勇気と変化をあたえるきっかけを、なるべくたくさん生み出していきたいです。その結果として、パーパスの実践に貢献できたら最高ですね。
PROFILE
※2023年8月時点
パナソニック コネクト株式会社
デザイン&マーケティング本部 コーポレートブランディング部 ブランディング課
小柳 佳南子
2019年にパナソニック株式会社(当時)に入社。海外営業、国内営業の担当を経て、現在はパナソニック コネクト株式会社のコーポレートコミュニケーション推進業務として、オウンドメディア運用、社外発信コンテンツ制作等を担当。
パナソニック コネクト株式会社
マーケティング本部 デジタルカスタマーエクスペリエンス統括部デマンドセンター1課
河村 みどり
2000年にLSI設計開発にてキャリアをスタートした後、2005年パナソニック コミュニケーションズ株式会社(当時)に入社。設計開発から各種商品/サービスの企画・販促・CSリーダーなどの経験を経て、現在はパナソニック コネクト株式会社にてデジタルマーケティングや社外発信コンテンツ制作を担当。
株式会社インフォバーン
エクスペリエンス部門
大里 耕平
映像制作、書籍編集を経験し、2017年に株式会社インフォバーン入社。編集者として、テクノロジー×社会課題解決がテーマのオウンドメディア運営を多数担当。2018年3月より「GEMBA」のコンテンツ制作に携わり、現在に至る。
INFOBAHN STAFF
アカウントプランナー:平石勝哉
プロジェクトマネージャー:西原雄一
コンテンツプランナー:大里耕平
コンテンツディレクター:丸山佑介、島田怜於、坪ノ内千絵子
WEBディレクター:遠藤剛