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本当にやるべきことを、あなたはすでに知っている

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※ 本記事は、特別企画「コンテンツディレクター9人が綴る、それぞれの『戦略的コンテンツマーケティング』」で紹介された、9編の書評記事の1本です。リンク先では、残り8編も紹介しておりますので、合わせてお楽しみください。

コンテンツマーケティングの概念や、人を引きつけるためのコンテンツづくりは、決して目新しいものではない。その本質は、「すでに知っていること」の再表現であり、その拡大像だ。自分たちが手がける商品/サービスが、ユーザーに快適さをもたらしたり、彼ら/彼女らの問題解決に役立ったりするということを、わかりやすく伝えてあげれば良いのだ。

そのために、もっとも大切になるのが「物語(ストーリー)」づくり。もう一歩、具体的に言うのであれば「あなただけの物語」づくりだ。それを実現するための要点は1つ、競争において差別化を図るということ──ほかと一線を画する別の物語を伝えることで、同じ物語をややうまく語るだけではダメだということ。「押し売り」せずに、あなたの製品/サービスを後押しする有益な情報──自分たちしかもってない、独自で、説得力のある物語を伝える(そのためには“語り口”も重要だ)。そこには意識があり、感情が絡んでくる。それによってユーザーを引き込み、彼ら/彼女らを気分良くさせることに成功したら、すばらしいコンテンツマーケティングを生み出しているといえるだろう。

また、コンテンツマーケターとしてもっとも重要な目標は、顧客たちが調べてみた結果、僕たちの製品/サービスが必要だと気づくように、その物語と製品/サービスとをうまく連携させることだ。つまり、「買ってください」ではなく「必要ですよね?」という伝え方。セオドア・レビットの名著と、それにまつわる鉄道会社の話を例に挙げて紹介したように、50年以上も前から、このコンテンツマーケティングの主要テーマ──製品の販売より、顧客のニーズについて考えること──は存在していた。いや、このような事例が残っていないだけで、おそらくそれよりもっと以前から、顧客目線でいることは重要だったはずだ。

 

大切なのは、早くに失敗し、学ぶこと

もちろん、いま述べたことを実現し、目標を達成することは簡単ではない。どんなビジネスプランからもリスクは排除できないし、リスクがあるからこそ、ビジネスは興味深く、やりがいのあるものだということも事実だ。そのリスクを許容し、「早いうちに失敗する」ことを認められる環境をつくれるかどうかも、コンテンツマーケティングを成功させるための1つのカギと言えるだろう。MLBにたとえたように、コンテンツマーケティングの“シーズン”は長い。失敗の機会もたくさんあるだろう。大切なのは、早くに失敗して、そこから学び、同じ失敗を繰り返さないよう適応/進化していけるかどうかだ。

それには、ユーザーときちんと話をして、外の声に耳を傾けることが重要となる。コンテンツマーケティングが失敗するのは、質の高いコンテンツが用意できないからではなく、たいていの場合、その遂行に不備があるからだ。重要なのは、ユーザーとの「関係」だ。関心を「つかむ」だけではなく「引きつけておく」必要がある。長期的成功を維持する唯一の方法は、継続的に人々を関わらせることだ。その関わりは、「何かを買わせる」ことだけでなく、彼ら/彼女らに「新しい顧客を紹介してもらう」ことや、「体験談を共有してもらう」ことの場合もある。

顧客ステージを問わず、新規顧客の流入や既存顧客のアップセルから、コミュニティを築くことによるブランド支持者づくりまでを実現し得るコンテンツマーケティング。社内外における体制づくりや「エンゲージメントサイクル」の策定など、その実現のための具体的なプロセスは、企業としては新たな挑戦ばかりかもしれない。しかし、恐れる必要はない。本当にやるべきことを、あなたはすでに知っているのだから。自分がどんなサイトを好んで頻繁に訪れ、どんな見せ方のECサイトで思わず商品をカートに入れてしまうか──自身の胸に手を当てて、思い出してみてほしい。それでも迷ったときは、本書をパラパラめくるといい。必ずや、あなたの悩みを打ち消し、背中をポンと押してくれるだろう。

奥洋介

男性ファッション誌やカルチャー誌、企業の会員誌、商業施設が発行するカタログやフリーペーパーなど、さまざまな紙媒体の企画・編集・執筆業務に従事。2012年インフォバーン入社。