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コンテンツマーケティングにおけるサービスデザイン的アプローチ

株式会社インフォバーン ロゴ画像

こんにちは、アートディレクターの木継です。僕たちデザインチームでは、前期からサービスデザインに力を入れています。

サービスデザインとは、一言でいうと、サービス提供という形でUXの質の向上と事業の継続を目指す、新しいデザインの領域です。今年に入ってから日本初のカンファレンスが開かれるなど国内での動きも活発化しているので、すでにご存知の方も多いかと思います。

こうした動きの背景には、ビジネスの差別化要因として「体験」が重視されつつある中で、UXに着目しながらサービス設計を行うサービスデザインの方法論が、体験価値追求のアプローチとして注目されているといった状況があります。

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インタラクションマップ、イメージボードなど、サービスデザイン実施の際に使用しているアウトプット類。

 

コンテンツマーケティングにサービスデザイン手法を応用する

さて、コンテンツマーケティングをテーマとするこのコラムでなぜサービスデザインの話がでてくるのか――。疑問に思われる方もいるかと思いますが、コンテンツマーケティングの実践において、このサービスデザインの考え方が応用できる場面が、とても多くあります。

両者の共通点について、順に見てみましょう。

 

ユーザーの理解

まず第一の共通点は、それぞれの提供するものが、個別のプロダクトや個別のコンテンツではなく、一連の体験である、ということです。

体験とは、言うまでもなく、パッケージされた状態では存在しません。ユーザー自身がそれぞれの生活のコンテクストの中で、ほかのいろいろなモノやコトと組み合わせて生み出すものです。

ですから僕たちサービスの提供側は、ユーザーがどのような嗜好性を持ってどのような生活をしているのか、また彼ら自身が気づいていないニーズや動機について、深く探り出していく必要があります。

こうしたユーザー理解を前提にUXを設計していくのですが、その実践のための考え方と手法については、井登の下記コラムをご参照ください。

■コンテンツマーケティンを成功に導く「ユーザー中心発想」
https://www.infobahn.co.jp/ib_column/2483

■消費者が語ってくれない「真実の95%」:ユーザー中心発想でコンテンツマーケティングを成功に導くヒケツ
https://www.infobahn.co.jp/ib_column/2876

 

コンテクストの創出

体験とは、前述のとおりさまざまな領域を跨ぎながら、いろいろなモノやサービス、さらには周囲の人たちと共有した情報や自身の経験などを組み合わせて生み出されます。

そして、個々人がより望ましいリソースの組み合わせの仕方を実現していけるポテンシャルは、情報技術とネットワークにより、ますます高まってきています。これは先のカンファレンスで武山政直氏(慶応大教授)が言及されていたことですが、このことは、コンテンツの閲覧時においてもあてはまります。

個々人の生み出すコンテクストの中で、ネット上に遍在するコンテンツを自由に組み合わせていく――こういった利用状況を前提に、企業は自分たちが持つリソースを再整理して価値を定義し、それらをコンテンツに変換して、ユーザーをとりまくいろいろな要素とスムーズに繋がるよう全体のフローを設計していく必要があります。

 

新たな価値の発見

このようにして体験の設計と提供が行われるわけですが、サービスデザインもコンテンツマーケティングも、その後のプロセスを重視しているところに、大きな特徴があります。

両者が重視しているのは、ユーザーと企業の継続的な関係構築。

企業はサービスデザインのフレームを用いて潜在的なニーズを探り出し、ユーザーは自分たちの利用文脈の中で商品やサービスの価値を見出していく。そしてそこからさらに新たな価値の可能性が生まれる、というように、お互いが接点を探りあう中で、それぞれが潜在的な価値を発見する可能性が高まります。

このように考えると、サービスデザインもコンテンツマーケティングも、企業とユーザーが、相互のインタラクションの中で新しい価値を生み出すプロセスであると言うことができると思います。

 

反復と継続

そして最後に、継続性。

どちらも、一回の仮説設定で結果が出ることはまずありません。サービスデザインではユーザー理解、問題の定義、プロトタイピング、評価というサイクルを回す中で、時として前後のプロセスを反復しつつ、ユーザーの反応を見ながら改善を繰り返し、「サービスの価値」を定義し続けていきます。

反復のプロセスはコンテンツマーケティングでも同様。弊社のWebディレクター・足代のコラムで指摘しているとおり、コンテンツマーケティングは設計、実行、検証、改善のサイクルの中で絶えず仮説とのずれを確認しながらチューニングし続ける必要があり、こういった継続的な取り組みが、潜在的な価値から新たな価値に繋げて行くというシステム全体の設計につながっていきます。

■脱サララーメン屋の開業に見る、サイト初期設計の重要性 〜コンテンツ企画とあわせて考えたいサイトの構造〜
https://www.infobahn.co.jp/ib_column/2943

 

以上、ざっと駆け足となりましたが、コンテンツマーケティングとサービスデザインに共通する「多様な分野を連携させて全体のつながりを設計し、相互作用の中で価値づくりをしていく」という考え方が、イメージできましたでしょうか?

次回からは、フレームワークの各プロセスに焦点をあて、もう少し具体的なお話をお届けできればと思います。

木継則幸

Creative Fellow / Designer

コミュニケーションデザイン領域を主軸にアートディレクターとして活動後、現在は事業開発及びブランドコミュニケーションにおけるコンセプトメイクからクリエイティブディレクション、エクスペリエンスデザインまで一貫したプロセスデザインを通じて企業・組織の課題解決と価値創出を支援。
NY ADC Award、文化庁メディア芸術祭等受賞多数。SFMoMA、Milano Salone、Tokyo Design Week等国内外で作品発表。サンフランシスコ近代美術館にパーマネントコレクションとして作品所蔵。