ユーザーの心を動かすリキッドコンテンツとは?
コカ・コーラ ゼロが美味しい季節ですね。
こんにちは、EXILEの暑苦しさはさておき、ゼロの弾けるクール感に夢中の成田です。
ということで、今回はコカ・コーラ社が2011年に「Content 2020」で提唱した「liquid and linked」によって、広く知られるようになったリキッドコンテンツについてご紹介したいと思います。
リキッドコンテンツとはリキッド(液体)という文字通り、液体のようにさまざまな形に姿を変え、メディアの種類に関係なくどこにでも流れ込み、浸透していくコンテンツのことを言います。特に近年は、オウンドメディアをハブにさまざまなメディアで編集され、広がっていく傾向が加速し、コンテンツのリキッド性がますます重視されるようになってきました。
コカ・コーラ社の上席副社長ウェンディ・クラーク氏は、2011年のAd Age digital Conferenceで、ブランド(広告主)が提供したものを閲覧することをImpression、ユーザーが自ら表現することをExpressionと言い、Impressionがユーザーにとってただの露出なのに対し、Expressionはユーザーとブランドとのエンゲージメントになると説明。これからはExpressionされるリキッドなコンテンツを発信していくことが重要だと語っています。
実際にYouTubeである期間に掲載されたコカ・コーラ社のコンテンツ(Impression)の閲覧数に対して、ユーザーが勝手に生成したコンテンツ(Expression)の閲覧数はその4倍だったとのことです。これはまさにコカ・コーラ社が自らExpressionを重視してコンテンツづくりをしている証左でしょう。
では、具体的にどのようなコンテンツをリキッドコンテンツと呼ぶのでしょうか。リキッドコンテンツであるために抑えておくべき5つの必要条件を紹介します。
リキッドコンテンツの5つの条件
- 共感を生むコンテンツ
ブランドが発信したい情報ではなく、あくまでもユーザーが欲し、共感できる情報を届けることが絶対条件です。たとえば最近ではプライベートDMPを利用することで、ユーザーの属性を正確に把握できるようになりつつあります。PDCAを回すなかで、ユーザーに合わせてコンテンツを変えていくことで、より共感度を高めていくことが可能になります。
- タイトルや画像が目に留まりやすい
コンテンツがメディアを通じて拡散するためには、「タイトル」と「画像」をいかに目に留まりやすくするかが重要になります。さまざまな情報が飛び交うネット上で、ユーザーの目に留まり、拡散してもらうためには、まず「タイトル」と「画像」がキャッチーであることが必要です。
- 拡散しやすいフォーマット
「データ容量」「データ形式」など、ユーザーがストレスなく拡散できる汎用性の高いフォーマットである必要があります。またソーシャルメディアとの連携がシームレスになっていることで、より拡散を促すことができます。
- 議論および編集の余地がある
ユーザー同士のコミュニケーションのネタになるようなコンテンツを提供することで、より多くのユーザーを巻き込むことができます。議論や編集による創意工夫の余地をユーザーに残しておくことで、コミュニケーションを促進できます。
- 時事性をおさえている
ユーザーやほかのメディアがコンテンツを拡散するのは、自分の友人にも話題としてそのコンテンツを共有したいと考えるからです。世間で共通の話題になりやすい、時事ネタや旬なネタを盛り込むことで、より拡散されやすいコンテンツになります。
以上がリキッドコンテンツであるための5つの必要条件になります。
今年大ヒットしたディズニー映画『アナと雪の女王』は、この5つの条件を踏まえたリキッドコンテンツで成功した象徴的な例でしょう。米国のオフィシャルサイトで40もの動画を公開し、日本の公式YouTubeサイトでは公開日までに予告に絡む12本の動画が公開。主題歌『Let It Go』のミュージッククリップが、全世界で42の言語バージョンで展開されるなど、世界中で多くのコンテンツを惜しみなく提供。ユーザーのあいだで口パク動画が次々とつくられるなど、ユーザー参加型のコンテンツになったのも成功につながった大きな要因ではないでしょうか。
リキッドコンテンツとネイティブアド
オウンドメディアだけで完結せずに、外部のさまざまなメディアを活用してコンテンツを効率的にユーザーに届ける方法をコンテンツディストリビューションと言いますが、そのなかで生まれてきたネイティブアドは、まさにメディアに合わせて「広告」に姿を変えたリキッドコンテンツの形態のひとつだと言えます。ネイティブアドは、メディアを使ってユーザーにブランド(広告主)のストーリーを伝え、共感を呼び、態度変容を起こさせ、共有してもらうための方法です。ブランド(広告主)のストーリーをユーザーが読みたいと思う最適なコンテンツに変換して届けることが、ネイティブアドの目的になります。
では、ネイティブアドという「広告枠」内に収まったリキッドコンテンツは、具体的にはどんな姿をしているのでしょうか?
論より証拠――ということで、「広告」という形に姿を変えた、いくつかのリキッドコンテンツの事例を紹介したいと思います。
インドア系ライフスタイルメディア「roomie」に掲載された花王「ソフィーナ クッション泡洗顔料」のネイティブアドです。商品の特性を生かして作られたかわいい動物が次々と登場。商品のセールスポイントを「泡アート」というユニークな切り口で紹介し、多くの反響を呼び、テレビのワイドショーでも紹介されました。
事例2:【新社会人・応援ノベル】やさぐれアヤの、今日もごはん作りスギー!
こちらも同じく「roomie」からですが、NTT東日本のインターネット接続サービス「フレッツ光」のサービスを、ある女の子の日常を短編小説風に描いたネイティブアドです。ネイティブアドと知りながら読み進めると、家電? 食品? カメラ? と、ブランド(広告)の商品が何なのか、その謎を解いていくミステリーのようでもあります。ほのぼのとしながらも、どんな展開になるのか予想ができないストーリーに、いつのまにか最後まで読まされてしまいます。
事例3:世界が感嘆したニッポンの「ひとりメーカー」。Bsize八木啓太さんのモノ作り魂を聞く
「クロレッツ」などのガムでお馴染みのモンデリーズ・ジャパンの「ガムならハカどーる」キャンペーンの一環として、「Lifehacker」に連載されたネイティブアドです。仕事をしている人なら誰もが気になる「仕事をよりスムーズに、より“ハカどる”ためにはどうしたらいいのか?」をテーマに、話題のハカどっている人々を紹介。いいね!数などを見ても、通常の記事を凌ぐ人気コンテンツとなっていました。
livedoor NEWSに掲載されたロート製薬のボディウォッシュ「デ・オウ」のネイティブアドです。LINE Japanの名物プロデューサー・谷口マサト氏が企画・編集したユーモアとお色気にあふれたコンテンツです。
同じく谷口氏が企画・編集した東芝のノートパソコン「dynabook KIRA L93」のネイティブアドです。さまざまな形に姿を変える忍者女子と、使用するシチュエーションに合わせて形を変えられるノートパソコンをオーバーラップさせながら、コミカルに展開。通常の記事を圧倒的に凌駕する驚異的ないいね!数とツイート数を生み出しています。
以上、リキッドコンテンツの具体例を紹介しましたが、これらの例からもわかるように、リキッドコンテンツはユーザーにとっておもしろく有益であれば、ソーシャル上で反応が得られ、さまざまなメディアに数多く取り上げられ拡散し、ひいてはユーザーの心を動かすというエコサイクルを生みます。
オウンドメディアにおいては、ブランド主導の一方的なメッセージだけを発信していても、ユーザーとのコミュニケーションは図れません。コンテンツの力を信じ、メディアの力を信じ、ユーザーの力を信じ、ユーザー視点のリキッドコンテンツを発信することが、ユーザーとの高いエンゲージメントを築くための最短の近道なのです。
photo:Thinkstock / Getty Images
この記事を執筆した成田も講師を務める「オウンドメディアのコンテンツ企画・作成ワークショップ」の詳細はこちら