メディアにとって一番大切なことは、購読者数でもPVでもない 〜アドバタイジングウィーク in N.Y.レポート〜
こんにちは。コンテンツ開発ユニットの菅原です。
アメリカ・ニューヨークで9月29日〜10月2日の4日間に開催された、世界中の広告関係者が集まる「アドバタイジングウィーク」から、いくつかのセッションのレポートをお届けします。
今回、ご紹介するのは「メディアにとって大切なことは何か」というセッション。対比されがちなマスメディアとデジタルメディアを代表する4者が何を語るのか注目が集まりました。
モデレーターは、世界有数の広告代理店である、IPG・会長兼最高経営責任者のマイケル・ロス氏(写真左端)。
パネラーは、まず伝統ある2つの新聞社から、「Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)」紙・副編集長のレベッカ・ブルメンシュタイン氏(写真左から2番目)、「Guardian(ガーディアン)」紙・副最高経営責任者のデビッド・ペムゼル氏(写真右端)。
そして、新興デジタルメディアからは「Mashable(マッシャブル)」創設者兼最高経営責任者のピート・キャシュモア氏(写真中央)、「BuzzFeed(バズフィード)」社長のグレッグ・コールマン氏(写真右から2番目)が登壇しました。
メディアにとって、もっとも大切なことは信頼できる情報かどうか
口火を切ったのは、モデレーターのマイケル氏。新聞社の2人に対して「今後もデジタル化に傾倒していくのか」と質問を投げかけました。
「Guardian」紙のデビッド氏はこれに対し、「完全に紙からデジタルへという話ではないが」と前置きしつつ、組織がデジタルエージェンシーのように変わってきたことで「(オーディエンス)データを活用してどんな記事が読まれそうかといった予測ができるようになった」と回答。また、同紙の強みは「信頼性」にあるとし、SNS上で圧倒的なフォロワー数(Twitterは270万超フォロワー、Facebookページは380万超いいね!)を誇るのも、「真偽の定かではない情報が飛び交うソーシャルメディア上で、ブランドへの信頼感がオーディエンスを獲得することに役立っている」と話しました。
一方で、「Wall Street Journal」紙のレベッカ氏は、大切なのはデジタル化を推進することではなく、「信頼できるソースであることだ」と述べました。このように考えるきっかけとなったのが、ある重要なニュース記事に対して「大変多いトラフィックを計測したことだった」そうです。
さまざまなデバイスの登場に合わせて、情報の入手元や入手方法が多様化した一方、オーディエンスはその情報の真偽について疑ってかかる必要がでてきました。そして、正確な情報を求めるようになった人々は「Wall Street Journal」紙のような、以前から確固たる信頼を築いてきたメディアへ流入。その結果、新たなオーディエンスを獲得できるため、新聞社を中心にメディアを取り巻くビジネスの状況には「楽観的だ」とも述べました。
ソーシャルシェアを起こすのが下手だったらやめたほうがいい
新聞社の両者が「信頼性」をメディアにとって大切なことに挙げたことに対して、「Mashable」のピート氏も同意。そして、「New York Times」紙のデジタル化推進に貢献した、ジム・ロバーツ氏などを雇い、「どのようなコンテンツがオーディエンスからの信頼性を高めることができるのか、分析を強化している」と自社の取り組みを紹介していました。
最後に「BuzzFeed」のグレッグ氏は信頼性の重要さに触れつつ、次のように言及。「うまくライティングができたとしても、ソーシャルシェアを起こすのが下手だったらやめたほうがいい」と述べ、単にデジタル化を進めるのではなく、デジタルならではの情報拡散について、しっかり知らないと意味がないと述べました。
「誰に? 何を? どのように? 」から「信頼性」へ
特に印象的だったことは、登壇した全員が口を揃えて「信頼性」の重要さを強調していたことです。
これまでメディア業界では常に「誰をターゲットに、どんなコンテンツを制作して、どのように届けるべきか」というテーマが議論されてきました。そのことを大前提として、本セッションでは、「(もっとコンテンツを見てもらうために)メディアとしての信頼性をどのように高め、維持し、利用していくのか」という、新たなテーマへと移ったように感じられました。