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どう読む? DIGIDAY[日本版]がひも解くデジタルマーケティングの最新トレンド

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こんにちは。株式会社インフォバーンの吉田です。2015年9月1日ローンチしたデジタルマーケティング戦略情報メディア「DIGIDAY[日本版]」の編集者を務めています。今回は、「DIGIDAY[日本版]の活用法」について、具体的な記事を例に紹介していこうと思います。

DIGIDAY[日本版]には大きく二つの特徴があります。

一つ目は、以前、編集長・長田が「DIGIDAY[日本版]が見つめる、デジタルマーケティング戦略の未来」で触れているように、世界的なデジタルマーケティング界の最新動向をいち早く提供できることです。

二つ目は米広告業界内の機微に触れた情報です。米DIGIDAYは編集方針に「取りつくろわず率直に伝えること」を加えており、パブリッシャー、ブランド、エージェンシー、プラットフォームそれぞれの視点や本音が、ありのまま書かかれているのが散見できます。

創刊2カ月足らずですが、この2点が、専門的な関心を持つ読者から評価されているかもしれません。とてもニッチで「埋もれてしまいがちな情報」が、記事掲載後にSNSなどで広くシェアされることも多々あります。小誌が「戦略情報メディア」と銘打ち、ビジネスパーソンに対する編集を心がけていることの証左になっているかもしれません。

では、創刊から取り上げてきたデジタルマーケティングの最新トレンドを掘り下げようと思います。DIGIDAY[日本版]を読むうえでの地図になれば幸いです。

(1) モバイル、動画:Google vs Facebook

モバイルシフトは大きなトレンドです。モバイル広告費は2018年にデスクトップ広告費を抜くといわれます(※1)。Facebookの広告売上の7割がモバイルになっており、米国ではタテ型動画を基調とした「Snapchat(スナップチャット)」などのアプリが10〜20代に強い人気を獲得しています(※2)。

動画広告も重要なトレンドです。大型プラットフォームが動画広告に参入し、競争は激化。数あるフォーマットのなかで、特に「プレロール広告(動画視聴前広告)」と「自動再生動画」へ広告主の注目が集まっています。ただし、プレロール広告はユーザーが素早くスキップしていることが課題です(※3)。自動再生動画は無音のため、無声映画のようなクリエイティブが必要になります(※4)。こちらもユーザーが素早くスクロールしてしまうことが課題です。

ディスプレイ広告については、ユーザーの5割程度しか視認されていないという議論がありますが、動画広告に関しても、いかにビューアビリティ(視認可能性)を高めるかが問われそうです。何をもってオーディエンスに視認されたか、という基準は各プラットフォームでばらばらです(※5)。測定を含めたルールづくりを米国の広告業界は続けており、まだその完成形は見えていません。

このモバイルと動画広告において、極めて大きな影響力を誇るのがGoogle(YouTubeを含む)とFacebookです。米国でのデジタル広告全体の売上では、首位のGoogleが4割を占めますが、Facebookが2017年にはシェア20%に近い水準まで伸ばし、Googleを急追すると予測されています(eMarketer調査 ※6)。モバイル広告でも、予測ベースで2015年にGoogle、Facebookだけで同広告売上の5割に達します(※1)。

(2) ユーザー体験とアドブロック

モバイルに関してはロード時間の問題が浮上しています。パブリッシャーがサイトに広告や各種のタグを埋め込むため、ロード時間が延び、しびれをきらしたユーザーが、「アドブロック(Web広告をブロックする機能)」を利用する傾向にあります。

先月下旬、アップルのiOS9にアドブロック機能が実装されたことをめぐっては、ネット上で、メディア・広告業界のビジネスモデルをめぐる「アドブロック論争」が起きましたが、小誌は、「既存の広告がユーザー体験を損ねており、新しいフォーマットを模索していくべきだ」という米広告業界人の提言を伝え、1万シェアを超える反響をいただきました(※7)。

ユーザーが広告を敬遠する傾向は、以前からテレビでの録画再生時のCM飛ばしなどで幅広くみられていました。なかでもアドブロックは媒体社と広告主をつなぐ広告ビジネスモデルを破壊する可能性があり、米IAB(インタラクティブ広告協議会)はアドブロックに阻害されない掲出経路を確保することや、ユーザーにアドブロックがメディア・広告ビジネスを破綻させかねないと説明することで、断固闘う姿勢を示しています(※8)。

(3) テレビ:OTTとコード切り

それから、テレビの昨今の大きな変化は現在、DIGIDAY[日本版]の読者の関心をもっとも集めているトピックです。

米国ではケーブル・衛星テレビの視聴率が落ち込んでいます。ロイヤルティの高い視聴者に支えられた米スポーツ専門局ESPNでさえ、「コード切り(ケーブルテレビの解約)」から逃れられませんでした。これが今年の夏、米テレビ業界に大きな影響を与えたのです(※9)。

その代わりにOTT(オーバー・ザ・トップ)ビデオと呼ばれる、既成のインフラを越えた動画配信サービスが伸びているのがトレンドです。9月初旬に日本でサービスを開始したネットフリックス、日本テレビが日本版を運営するHulu、2015年10月21日に広告を抜いた課金制サービスを発表したYouTubeなどがOTTに含まれます。

テレビのビジネスモデルが揺らいでいるともいわれますが、動画の視聴はさまざまなデバイスにフラグメンテーション(断片化)しています。このすべての視聴を合計すれば「テレビ」視聴はむしろ拡大しているという議論もあるくらいです。

(4) データ活用

データを活用したマーケティングは近年注目をあつめる分野です。

企業は自らの顧客データを最大限活かそうと考えており、サードパーティデータを活用しています。多量のデータからカスタマージャーニーを解明し、広告活動の投資利益率(ROI)の向上とマーケティングの効果拡大を目論みます。

蓄積されたデータは顧客のセグメンテーション、ブランド戦略、商品開発などマーケティングのさまざまな分野に活かされます。マスから個へと、マーケティングのターゲットシフトを促進することが期待されているのです。

企業によるマーケティングへのデータ活用が進んでいる米国では、データ・マネジメント・プラットフォーム(DMP)の活用が盛んで、ブランドやパブリッシャーの半数近くが導入済みです(※10)。

こうした企業にデータ技術を提供するサービスが現在マーケティング業界で存在感を強めており、世界最大の広告代理店グループ「WPP」のマーティン・ソレル氏はオラクルやセールスフォースなどを新しいライバルとみなしています(※11)。

Facebookは蓄積されたユーザーデータに、「データロジックス」と呼ばれる、ビッグデータ企業が提供する実店舗での購買行動データを結びつけることで、莫大な広告費を持つ生活必需品メーカーの求めるターゲティングと効果測定を手に入れました(※12)。

 

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他にも、ソーシャル拡散に主眼置いたメディアの登場など、さまざまな話題に事欠きません。今後もDIGIDAY[日本版]が国内外の最新トレンドを伝えるメディアになるよう、貢献しようと考えています。

また、末尾にDIGIDAY[日本版]を含む文中における参照記事リンクを付記しました。興味を持たれた方はどうぞ小誌を訪れてください。

 

(参照記事)

※1 DIGIDAY[日本版]「眠った金脈は250億ドル!? 『モバイル広告』の明暗を示す5つの予測」

※2 DIGIDAY[日本版]「タテ型動画」の時代が到来! スマートフォン発の新しい動画視聴スタイル

※3 DIGIDAY[日本版]「音のないFacebook動画広告、いかに攻略すべきか? GIF画像や無声映画をヒントに」

※4 DIGIDAY[日本版]「再生開始から3秒で、7割がスキップ? 「動画広告」の課題を浮き彫りにした、Snapchatの事例」

※5 DIGIDAY[日本版]「Facebook広告、新しいインプレッション規定を発表。インフィード広告の1ビューはどこにある?」

※6 The Economist Espresso「Digital catwalk: all eyes on Google」

※7 DIGIDAY[日本版]「広告業界人だけど『アドブロック』を使ってみた結果:ユーザー体験が劇的に向上して驚いた」

※8 米DIGIDAY「How the IAB plans to fight ad blocking」

※9 DIGIDAY[日本版]「アメリカの「テレビ業界」に激震が走った、2015年夏 〜業界の寿命を真剣に考えてみた」

※10 DIGIDAY[日本版]「DMPは、いかに普及しているのか? 5つのグラフが示す、ブランド&パブリッシャーの利用状況」

※11 DIGIDAY[日本版]「 GoogleやFacebookは『友を装う敵』だ! 〜英大手代理店WPP マーチン・ソレルCEOが見つめる『広告の未来』」

※12 DIGIDAY[日本版]「クリックは「購買」と、あまり関係がない 〜Facebookも頼るビッグデータ企業が垣間見せる真実」

吉田拓史

早稲田大学政治経済学部卒。2010?15年にインドネシアの邦字新聞で記者。政治経済分野を担当し、大統領選挙、国際会議、インフラ開発などを取材。2015年9月よりデジタルマーケティング戦略情報サイト「DIGIDAY[日本版]」編集者。