アプリでエンゲージメントを築く! 企業・ブランドのアプリ活用法5事例
2007年1月のiPhone発表から、早8年。強力な競合、Androidも誕生して、本格的なスマホファーストの時代が到来しました。ユーザーの人気もウェブアプリからスマホ専用のネイティブアプリへと移り、その融合版ハイブリッドアプリなるものも登場しています。
そんななか、スマホアプリを自社のプロモーションに活用する事例も増えてきました。今回は、2014年に話題となったプロモーションアプリのなかで、特に企業ブランディングとして成功しているもの5事例をご紹介いたします。
カタログモデルはあなた! 試着×3Dのメガネショップ
事例1:「Glasses.com Virtual Try-On App」 / Glasses.com
めがねのECサイト、Glasses.comの「Virtual Try-On App」は、3D技術を使用してめがねを試着できるアプリです。カメラで撮影した顔をアプリ内でモデリングして、2,000種以上のめがねを正面から横から、さらには照明効果を変えたりしながらバーチャル試着が可能。めがねをかけた際に顔に落ちる影、鼻先へ下ろした時の見栄えなど、精巧に再現されます。試着をしようと鏡の前に立ったら自分の顔がぼやけて見えない、という苦い体験はせずに済むのです。
実際にアプリを使用してみて、まず感じたのがリアルさ。モデリングの待ち時間も気にならない程度でした。また、一度に複数比較でき、実店舗と違って悩み放題! 決断力に欠ける筆者でもストレスなくめがねを選ぶことができました。
バーチャル上でめがねや洋服の試着ができるサイトは、今でこそ増えています。ですが、この「Virtual Try-On App」は、アプリ上での手軽な3D試着で他社との差別化をはかり、注目を集めました。2013年7月のリリースから1週間で5万ダウンロード、現在では130万回以上ダウンロードされています。
世界中どこにいても、誰もが熱くなる。オリンピックの熱気をアプリで
事例2:「Visa 360 cam」 / VISA
27年間オリンピックのスポンサーをつとめているVISAが、2014年のオリンピック開催の年に新たなブランドスローガンとして“Everywhere You Want to Be-あなたの目指すところへ”を掲げました。世界的なイベントであるオリンピックをサポートする上で、「あらゆる体験を可能にする」というテーマのもと、VISAが配信したのがこの「VISA 360 cam」。
選手の体に取り付けたカメラで撮影された映像は、まるで自分が競技に参加しているような錯覚に陥るほど、臨場感と迫力が感じられます。デバイスの向きやスワイプ操作で360°視点を変えることができ、選手の間近な表情や選手から見た景色など、普段テレビで見るのとは違うまったく新しい方法で観戦ができるのです。
ソチオリンピックに向けて練習をするアメリカチームの選手の協力によって撮影され、アイスホッケーやハーフパイプ、フィギュアスケートなど、スリリングでアクロバティックな体験ができるアプリとなっています。
このアプリは、オリンピックの熱気やアスリートの身体能力の高さを追体験できることから、オリンピック開会式からわずか数日間で10万人以上にダウンロードされました。(1カ月で約33万ダウンロードを記録)
なにげない日常のドライブが思い出に変わる
事例3:「SmileDrive」 / Volkswagen
「SmileDrive」は普段のドライブをさらに楽しくするためのアプリです。ルート・距離・所要時間・天候などの記録に加え、撮影した写真や動画のシェア、アプリユーザー同士がすれ違った回数のカウント、ドライブ時間や距離に応じたバッジ付与、というようにゲーミフィケーションとコミュニケーション要素が盛り込まれています。
これまでGoogle+やYouTubeなどに共有された写真・動画・ポストの総ビュー数は150万回以上と高いエンゲージメントを獲得し、2014年のShorty Awardsでは5カテゴリを受賞しています。(※Shorty Awards…ソーシャルメディアを活用したブランドを表彰するアワード)
Volkswagenは2012年から”Why VW”というキャンペーンを展開。ワーゲンにまつわるストーリーや写真を投稿・シェアできるマイクロサイトを立ち上げ、オーナー同士のコミュニケーションの活性化に加え、オーナーでないユーザーにもポジティブで明るいブランドイメージを持ってもらおうという狙いがありました。
本アプリもそれに則り「クルマはただ走るためのものじゃない、みんなで楽しめる体験を共有しよう!」というテーマで開発されています。
クルマ社会であるアメリカでは一日あたり平均52分をクルマでの移動に要し、それらの76%がひとりでのドライブだといいます。ドライブ中の楽しみとして「SmileDrive」を活用することで、クルマへの愛着が一層高まるのではないでしょうか? ドライブ体験の進化系として、旅をデータや数値として残すことは、まだまだ潜在的な用途がありそうですね。
テーマパークでの一日をさらに充実させるために!
事例4:「Antarctica’sEpic Voyage」 / SeaWorld Parks & Entertainment Inc.
フロリダ州オーランドにあるテーマパーク、シーワールド・オーランドのアプリです。オーランドといえば、ディズニー・ワールドや、ユニバーサル・オーランドなどの名だたるテーマパークがありますが、ナンバー3がこのシーワールド・オーランド。海洋生物がいて、アトラクションもある、という贅沢なテーマパークです。
このアプリでは、シーワールド・オーランドの魅力を伝えるため、工夫されたツールやコンテンツが提供されています。
- チケット購入
- アトラクションの待ち時間検索
- トイレナビゲーション機能の付いたマップ
- 園内飲食店の予約
- 小さな子供のためにアトラクションの身長制限絞込み機能
- 動物クイズ
- アプリ割引
- クルマを駐車した位置の検索機能
パークの特色を生かしつつ、体験をより楽しいものにするため、アプリを上手に使った事例ではないでしょうか。
我慢できますか? 10分の我慢が一日分の水になる
事例5:「Tap Project」 / UNICEF USA
10分間スマートフォンを使用しないことで、清潔な水を飲むことができない環境で生活している子供たちに安全な水を寄付できる、その手軽さからさまざまな場所で話題になったUNICEF USAのキャンペーンアプリです。手順は簡単、アプリを立ち上げてそのまま放置するだけ。
「私たちは携帯電話がないと生きていけないと思っている。でも、生きるのに本当に不可欠なものは?」という問いかけ。水に恵まれた国で暮らす以上、安全な水が手に入らない環境を体験することは難しいですが、不便さ・もの足りなさを身近な携帯電話に置き換えて体験してもらおうというユニークな取り組みとなっています。
現在このキャンペーンは終了していますが、こちらから寄付活動のサポートができるようになっています。また、同ページから現在の寄付数がリアルタイムで更新されており、自分がどの程度貢献できているのか数字で見ることができます。
バイラルを起こしたり、テクノロジーを活用したりと切り口はさまざまでしたが、今回は、企業・ブランドの特色を生かしながらユーザーに体験を与えるアプリをご紹介させていただきました。
単にアプリを配信するだけではなく、ユーザーのニーズを考え、上質なコンテンツとあわせて「体験」を提供していくことがさらなるブランディングとなるのではないでしょうか。今後も価値のある体験がウリの事例が増えていくと良いですね。