パーパスの社内浸透を目的に、ゲーム感覚で取り組める体験型ワークショップを設計
日立グローバルライフソリューションズ株式会社
Outline
パーパスと個人の原体験から事業アイデアを発想するワークショップ
日立グローバルライフソリューションズ株式会社(以下、日立GLS)は、日立グループにおける家電・空調を中心としたプロダクト事業、ソリューション事業を提供する企業です。
本プロジェクトでは、日立GLSが社内で実施されたパーパス浸透度サーベイにおける課題解決のための施策として、オンラインワークショップの実施を検討されるなかで、インフォバーンにご依頼いただき、その企画段階から参画しました。
一般的に、パーパスを浸透させ、実現するための組織変革は、大きな組織であればあるほど困難をともないます。特に、今回の対象者である若手従業員にとっては、パーパスと目の前の業務を紐づけて自分ごと化するきっかけ自体が少なく、その機会をつくりたいとご相談いただきました。
そこでインフォバーンは、日立GLSのきざし(*)を活用し、ゲームデザインの知見を援用することで、従業員個人の思いとパーパスの接点を探る、アイデア発想ワークショップを設計しました。
*きざし:2010年に日立製作所社会イノベーション協創センタ(現デザインセンタ)が社会イノベーション事業に関わる未来洞察を行うためのリサーチ手法として考案し、現在、日立グループ内、およびパートナー企業との顧客協創による新事業開発で活用されているものです。
関連リンク:「きざしとは」日立グローバルライフソリューションズ株式会社コーポレートサイトより
クライアント
日立グローバルライフソリューションズ株式会社
制作・実施期間
2023年12月~2024年2月
担当領域
コンセプト設計
プロトタイプ制作
テストプレイ
運営スライド、トークスクリプト制作
Concept
きざしを活用した体験のデザイン
日立GLSのパーパスは「ひとりひとりに、笑顔のある暮らしを。人と社会にやさしい明日を。私たちは、未来をひらくイノベーションで世界中にハピネスをお届けします。」です。企業の存在意義でもあるパーパスの実現は、一朝一夕にはできない、従業員にとっては遠くにあると感じられる目標です。そこで、パーパスの実現よりも手前のより身近な未来にフォーカスすることを検討しました。
日立GLSには、生活分野に関する10年後の未来を洞察したきざしから生まれる、バックキャストの考え方を用いたビジョン駆動型の意思決定プロセスがあります。このきざしとは、日立GLSが未来を見据えて 、10年後の社会における生活のシーンや生活者の価値観変化をストーリーとして描いたものです。
従業員がパーパスを自分ごと化するためには、自身のなかにある志を言語化し、パーパスと結びつける作業が必要です。そのために、体験設計として、グループワークで各自の原体験を引き出し、きざしをヒントに未来を想像する、という方向ですり合わせました。
諸条件を踏まえてインフォバーンが提案したのが、「内省と観察 過去と未来を行き来する」というコンセプトです。
仕事から意識を離してユーザー視点で内省し、生活分野における自身の原体験や価値観を掘り下げ、第三者視点で観察と記録を行うことによって、他者のエピソードからパーパス実現につながる事業のヒントを見出すという狙いがありました。
Approach
ゲームデザインの知見を援用し、刺激的なワークショップ体験を設計
具体的な設計にあたって何よりも重視したのは、ポジティブな気持ちで参加してもらう仕掛けです。具体的には、ワークショップにインタラクティブ性やランダム性をもたせることで、ゲームのような体験を提供できないかと考えました。
ポイントとなったのは、さまざま視点を同時に体験できるルール設計です。ワークショップ参加者は数人のチームに分かれ、各自がターンごとに異なる役割を演じます。まずいちユーザーとして「自身が気に入っている製品・サービス」に対する思いを述べ、次のターンではユーザーに質問を投げかけ、3ターン目には記録する立場を担当するといったように、チーム内で役割を入れ替えながら、「人の思いがこもった製品・サービス」のエピソードを集めます。
そこから、自ら質問して引き出したエピソードを記録したドキュメントをアイテムカードとして活用し、きざしやパーパスと組み合わせて10年後の事業につながるアイデアを発想する、というのがワークショップの大まかな流れです。参加者は、他者の思いを起点にアイデアを発想することで、それぞれが想定外の10年後をイメージし、その実現に向けたアクションを検討するという体験を得られます。
最後に参加者全体で行った振り返りでは、「あの部署と組めば実現可能なんじゃない?」「今度、〇〇さんを紹介しますね」など、お互いのアイデアを実現するために助け合う参加者たちの姿が印象的でした。
5回の「テストプレイ」を通して体験をブラッシュアップ
本ワークショップはオンラインで実施しました。遠隔で実施するオンラインワークショップでは、参加者が企画者の意図通りに動いて体験を受け取ってくれることは稀です。そこで取り入れたのが、ゲームデザインにおける「テストプレイ」というプロセスです。
大まかな方向性とルールを決めたプロトタイプの段階から、可能な限りテストプレイを繰り返しながら完成させていきました。企画から納品まで約2ヶ月半という短い期間のなかでも、テストプレイを5回実施できたこと(インフォバーン社内のみを含む)が、体験のクオリティ向上に大きな効果を発揮したと考えています。
Output
2024年3月より社内研修に活用
日立GLS社内での運営負荷を減らすため、運営用のスライドやタイムテーブルとトークスクリプト、参加者が記入するワークシートなど、必要なツールをすべて納品。完成したワークショッププログラムは、プロジェクト終了後も社内での研修に活用されています。
営業・サービス・コーポレートなど幅広い部署の従業員がワークショップに参加し、実施後のアンケートでは参加者全体の83%が「ためになった」、94%が「楽しめた」と回答。自由なアイデア発想や他部署との対話を通して、「自分にとってパーパスとは何か」を考えると同時に、長期視点で会社の強みを考えたり、従業員同士が部署を越えたつながりを深めたり、将来への前向きなモチベーションを醸成したりする機会をつくることができました。
インフォバーンは、今後もインナーコミュニケーションを支援してまいります。
Voice
日々の業務とパーパスがつながらず、パーパス実現のために何をしたらいいかわからないと悩む従業員が、楽しみながらパーパスを自分ごと化する、主体的に会社や自身の未来を考えるワークショップにしたいと考えていたため、「ゲーム感覚」「体験型」というご提案に魅力を感じました。
実際、参加者自身が思い入れのあるアイテムときざしをうまく使ったことで、パーパスへの納得感と新たな気づきを同時に得ることができ、大変良かったと思います。ありがとうございました。
日立グローバルライフソリューションズ株式会社
木田 萌未 様
Member
コンテンツプランナー|大里耕平
コンテンツディレクター|今田奈々